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演題 「潜むヤミ」

弁士 西澤佑希(法2)

【導入】
最短30分!
スマホでできる!
口座は不要!
CMでよく見る言葉です!
写っているのはどこかで見た事のある美男美女ばかり!
なんのCMでしょうか?
そう!銀行カードローンのCMです!
現在、銀行カードローンは安心と利便性をうたい文句に、市場を急拡大しています。
便利で安全にお金を借りることができるのであれば、何も問題はありません。しかし、実際のところは、うたい文句のように甘くはないのです…
最初に借りたのは50万円でした…そう語るのは、とある女性。この女性は息子の養育費に困り、銀行カードローンでお金を借り入れました。
そのおかげで、その子は、なに不自由なく生活することができるようになりました。
しかし、借り入れの額は、だんだんと増えていき、7年後には、250万円もの借金が残っていたのです。
 結局、その女性は自己破産してしまったのです。
「どうしてこうなってしまったのだろう?」と…彼女は言いました。
安心だと思って借りたにもかかわらず、気が付いたときには、膨大な借金が残っている。
本弁論は、銀行カードローンの利用によっておこる問題を分析し、その解決策を導き出すものであります。
【現状】
では、まず、銀行カードローンとは一体どういうものでしょうか?
カードローンとは、住宅ローンや、教育ローンといったものと同じ種類のものです。
カードによってキャッシングすることを言います。
カードローンの特徴は、何度でも借り入れができる!
しかし、現在、銀行カードローンの過剰融資が起きています。
過剰融資とは、貸金業者が借り入れを申し込んだ人の返済能力を考慮せず、 返済能力を超えて、融資するものであります。
具体的には貸金業者からの借り入れ金額が、年収の3分の1を超えることを指します。
この年収の3分の1という基準は、一般的な消費者が、3年をかければ何とか返済することが出来る基準なのです。
では、なぜ、3年なのか?
それは、消費者の返済意欲持続の観点から定められたためです。
つまり、年収の3分の1の融資は、消費者が返済することがぎりぎり可能で、かつ、返済を続ける意欲が持続する限度なのです。
この基準の通り年収の3分の1以内の融資であれば、消費者は返済することができ、問題はありません。
しかし、現在、銀行による、年収の3分の1以上の融資が起こっているのです。
新聞社の調査によれば、全国銀行協会に入会している120の銀行の内、80もの銀行が年収の3分の1を超えて貸し付けているのです。
その数は、カードローンを提供している銀行の83%に上ります。
また、日弁連の調査によれば、債務の相談に来た人の内、約7割の人が年収の3分の1以上の貸付を受けているという結果が出ています。
つまり、現状およそ8割の銀行はカードローンによる過剰融資を行い、そして利用者は返済の困難に直面していることがわかります。
【問題点】
確かに、消費者は、お金が欲しくてお金を借りたのです。そこには、消費者のニーズがありました。
お金を借りたことで、抱えていた金銭的な問題は、解決されました。
しかし、消費者が自分の返済能力を超える借金をする場合は、将来返済できず、さらに大きな金銭問題に直面するのです。
実際,過剰融資によって、返済できなくなった結果、自己破産や自殺に陥ってしまった人がいるのです。
つまり、銀行の過剰融資によって、消費者に将来的に大きな金銭問題を抱えさせてしまうのです。
【原因分析】
それでは、なぜ、銀行は過剰融資を行えるのでしょうか?
それは、歴史的にできた法的な穴が存在するからです。
それを探るために、ここで一度、カードローンの歴史を見る必要があります。
問題として取り上げている個人向けの無担保ローンの市場は、かつては、消費者金融やクレジットカード会社が主体でした。ところが、今から10年以上前に消費者金融問題がおこったのです。
それは、いわゆる消費者金融による3K…高金利、過剰な貸し出し、過酷な取り立て、の社会問題化であります。
そこで政府は、2006年に、貸金業法を改正し、利用者の年収の3分の1を超える融資を禁ずる、いわゆる総量規定を導入しました。
その結果、法律の狙い通りに、消費者金融からの貸し出しは、2010年は9兆円だったものが、2016年には4兆円にまで減少!!
これによって、消費者金融問題は解決したかのように見えました…
しかし、実際は、解決していなかったのです。
実は、この貸金業法、大きな穴があるのです。
それは、銀行は適用の対象外であることです!
その結果、法律の適用によって規模を縮小した消費者金融に代わって、銀行が市場を急速に拡大していってしまったのです。
実際に、日本貸金業協会によれば、銀行カードローンの貸付残高は、2011年ごろから2016年までの5年間で1.6倍に増加しました。その額は、なんと5兆円にも上ります。
ではなぜ、銀行は過剰融資を行うのでしょうか?
本来、返済能力のないところにお金を貸し出すことは、銀行の損失になります。返済能力のないところにお金を貸しても意味がありません。
しかし、ここにはカラクリがあります。
実を言えばこの銀行カードローンは、銀行にとってノーリスクなのです。
ではなぜ、銀行にとってノーリスクなのでしょうか?
それは、銀行と保証会社が連携しているからです。
銀行はお金を貸すときに保証会社に保険料を支払います。
この保証会社が、万一焦げ付きが生じた場合、元本と利息を銀行側に保障するのです。
そして、保証会社に払う保険料よりも、金利の方が高い。そのため、焦げ付きが生じようと生じまいと銀行側は絶対に損をしないのです。
だから、銀行は消費者に貸し付けるだけ貸し付けてしまうのです。
以上の原因分析をまとめると、
銀行カードローンは、
貸し出す額に制限が設けられていない
ノーリスクで儲かる為、お金を貸し出し続けてしまう
という、構造的な問題が潜んでいるのです。
【解決策(金融庁と銀行の利益体制の確保)】
それでは、銀行カードローンによる過剰融資をなくすためにどうするべきか?
私は一点の政策を提案します。
それは、銀行法を改正して、貸金業法に規定のある総量規定を設けることです!!
総量規定とは、利用者の年収の3分の1を超える額を融資してはならないというものです。
これを、現在、適用されていない銀行に適用するために、銀行法を改正するのです。
そうすることで、銀行による過剰融資を抑えることが出来ます。
【結び】
かつて起こった消費者金融問題以降、消費者金融の貸付残高は年々減っています。
代わって、増えてきたのは、銀行による貸し付けです。
現行法の穴を埋めることで、過剰融資を完全に止めることが出来るのです。
潜むヤミ…
今は、まだ、問題ないかもしれない。今は、まだ、表面化していないかもしれない。政府は、銀行の貸付残高は、把握していますが、利用者の借入の実態は、分かっていません。しかし、事例として、自己破産に陥る人がいる。それは、過剰融資から起こるのです。
彼らは、小さな問題を解決せんがために、より大きな問題へと陥ってしまったのです!!
潜むヤミを、今こそ、照らさなければならない!
消費者を、救わなければならないのです!
ご清聴ありがとうございました。



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