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演題 「保育の未来」

弁士 大滝虎太郎(文1)

【導入】
 日本は素晴らしい!
 社会保障は充実し、かつては遅れていた女性の社会進出も改善しつつあります。育児休暇なども取りやすくなり、女性の働きやすい社会はすぐそこまで来ています。
 しかし、「日本死ね!」ある女性がブログ上に残したこの言葉は、日本が未だ解決し切れていない問題を浮き彫りにしました。
 待機児童問題です。

 子どもを保育園に預けられない事で働けない女性がいます。
 「自分が社会に出て活躍したい!そしてなにより家族のため働きたい!」
 そう、願う女性がいるのです。
 一方で、その想いとともに、愛するわが子を十分な時間と愛情によって育てる事もまた、母親の願いです。
 この願いは、母親一人では両立する事は難しいでしょう。
 しかし、私たち社会の側が育児を支援できれば、この両立が現実のものとなるのです!
 それこそが、社会福祉としての保育なのです。
 本弁論は待機児童問題を解消する事で、母親がこの2つの願いをどちらも叶えられる未来を目指すものであります。


【現状分析】
 現状、厚労省によると全国で約4万5千人の待機児童が確認されています。
 さらには、親が求職中であるなどの理由で定義から外れたものを潜在的待機児童と呼びますが、彼らを含めた場合の待機児童数は約40万人にも上るとされています。


【問題点】
 この待機児童問題は働きたい女性に対し大きな負担を負わせているのです。
 なぜなら、子どもを保育園に預けられないために、働きたくても働けていない母親を多く生み出しているからです。
 彼女たちはただ子供を預けられなくて困っているわけではありません。
 家庭の経済状況のために、あるいは愛する我が子を養うために、働かなくてはならない女性がいます。
 さらには、自ら働き、男性と同じように社会に出て活躍したい。
 そんな母親たちの想いの前に立ちはだかっている問題が、待機児童問題なのです。

 しかし、その想いは、子供の預け先が無いという状況を前にすると、放棄せざるを得なくなります。
 実際、子どもを預けられない為に、働きたいけど働けない母親が日本には約40万人存在しています。
 つまり、40万人もの人が、待機児童問題によって、「働く」という本来自由に選ぶことが出来るはず選択肢自体を、奪われてしまっているのです。


【原因分析】
 このような状況に対し、政府も待機児童問題を緊急の課題ととらえ、待機児童解消加速化プランを提示しています。
 待機児童をなくすためには、保育園と、保育士の両方が必要になります。
 保育園に関しては、政府の政策で、五年前の1.25倍・約3万か所となりました。このまま増加しますと、来年には待機児童の数に対し十分な保育園を確保できるとされています。
 しかし、いくら保育所が増加してもそこで働く保育士がいなければ意味を成しません。
 なぜなら、1人の児童に対する保育士の数はすでに決まっており、保育士が確保できなければ、いくら設備が整っていても子供を受け入ることができません。
 厚労省によると、2017年までに必要とされる保育士の数が50万人なのに対し、現状の保育士の数は43万人程度で、7万人の保育士が不足しています。
 つまり、現状必要な施設数は確保されつつあります。しかし、保育士が不足しているために、待機児童問題が深刻化しているのです。
 むしろ逆に、保育士を確保し、施設に配置していく事が出来れば、待機児童問題を解消する事が出来るのです。

 では、どのようにすれば、7万人の不足を補うことができるのでしょうか?
 まず政府が行っている現状の政策では不足分を補うのは難しいでしょう。政府の政策というのは、保育士の賃金を月給の5% 増加させるというものです。
 しかし、現在保育士の月給は平均20万円と全産業平均の30万円を大きく下回っており、この増加は決定的とは言い難いものです。
 実際に、保育士希望者の六割が現在の平均月収に5万円を加算したものが妥当な金額であると答えています。保育士数は微増していますが、政府の目標である50万人には今のままでは達成できません。
 ここで私は発想を逆転させる提案を行います。保育の一部、または全部を保育士でない人に行ってもらうのです。
 そもそも保育の業務はすべて保育士にしかできないものなのでしょうか?
 保育士の業務には、園児の送り出しや連絡帳の作成など専門的な技能を必要としないものもあります。それを考えれば、保育の業務の一部は保育士以外に委託することも可能なのです。


【解決策】
 以上を受けて、保育士不足を解消するために、准保育士の導入を提案します。
 准保育士とは、保育士資格を持っていなくても保育士として働く事を可能とするものとし、子育て経験者である母親が対象で、三か月の研修を受け保育園で働けるものとします。
 この准保育士を導入することで、現状不足している7万人の保育士を補うことを目的とします。
 准保育士の雇用体系はパートタイムとします。子育てを終えた母親が自由に働く事が可能となり、保育園側にとっても昼から夕方の保育園が忙しい時間帯等を補うことが出来るのです。

 さらに、准保育士の出来る仕事と出来ない仕事を明確に区分し、一度に見ることのできる子どもの人数を保育士の半分とします。
 なぜなら、保育士の仕事には、発達心理・保健・栄養など、高度な知識を必要とするものも含まれており、保育にかかわるすべてを准保育士に任せることができるわけではないからです。
 そのため、准保育士の業務は主に、保育士の補佐と、事務などとします。准保育士は保育士の監督のもと、保育を行うことができることとします。
 このように、保育業務の一部を准保育士に任せることによって保育士不足を補うのです。

 この政策を実行するためには、児童福祉法第43条により定められている保育士配置率を改正しなければなりません。
 保育士配置率とは保育園における保育士資格を持つ職員の割合のことですが、この法律により定められた保育士資格を持つ職員の割合を現行の100%から80%に変更します。
 そして残りの20%を准保育士とします。この80%という数字はOECDが採用している基準であり、保育の質を確保しつつ、保育士の負担を最大限減少させることが出来る割合なのです。


【政策効果】
 私の政策が施行されれば、7万人不足している、保育士を柔軟な雇用形態である准保育士により補うことができます。それによって、待機児童問題の解決への道が開けるでしょう。


【まとめ】
 ブログに想いを綴った女性は、今の日本の待機児童問題の実情をあらわにしました。
 彼女だけではなく、子どもを預けられなかった多くの女性は今も、育児と仕事のジレンマに苦悩しているのです。
 「自分が社会に出て活躍したい!そしてなにより家族の為に働きたい!」
 その願いは、愛するわが子を安心して預けることが出来なければ叶う事はありません。
 その願いは、私たち社会の側が待機児童問題を解決する事によって、現実のものとなるのです!
 それこそが、社会福祉としての保育の未来なのです。

 ご清聴ありがとうございました。


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