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演題 「明るい労働」

弁士 飯村大介(政経1)

【導入】
 労働 皆さんはこの言葉に何を思い浮かべますか?
 労働 これは私たち学生が将来避けて通ることができない道です。
 労働とはただ生活を維持するために行なわれる行為ではありません。労働とは労働者が社会との関わりを確認し、自己実現の手段にもなりえるのです。労働者にとって安心できる環境で働くことを望むのは当然です。
 本弁論は、1人でも多くの労働者が安心して働ける労働環境の実現を目指すものです。


【現状分析】
 では、安心して働ける環境とは何なのでしょうか。その要素は二点あります。
 1点目、ワークライフバランスが達成されること
 2点目、職場にハラスメントがないこと
 以上の2点です。
 ではまず1点目のワークライフバランスが達成されていることについてご説明致します。
 ワークライフバランスとは仕事とプライベートが両立することです。このバランスの為には、どれくらい私的な時間が生活の中で確保できているのかが重要となってきます。
 しかし現状では、この私的な時間の確保が難しい状態となっています。労働基準監督署によれば、2014年度だけで約28000箇所もの事業所が法定労働時間に違反していたのです。
 続いて2点目の職場にハラスメントがないことについてご説明致します。
 労働時間と並んで、ハラスメントが職場にないことというのは、労働者にとって重要な要素です。職場にハラスメントがあった場合、労働者は労働として受ける以上の苦痛を受け、労働を続けることが難しくなるからです。
 しかし現状では、ハラスメントは撲滅できていません。
 厚生労働省によれば2013年度だけで46000件ものハラスメントに関する相談が寄せられています。そしてこの件数は毎年増え続けているのです。
 この2点によって、現在、労働者の心身のバランスに支障がきたされているのです。
 厚生労働省の資料によれば、労働災害の認定請求件数は、ここ十年でおよそ4倍に膨れ上がっています。そのうち、精神障害による過労自殺の件数は、およそ10倍になってしまっているのです。このことから、現在の 日本の労働者は、仕事と私生活が両立できているとは言えず、心身を破壊されるような過度な労働が増えていることがわかります。
 労働者は日に日に安心して働ける労働環境から遠ざかっているのです。


【原因分析】
 では、このような労働環境が世間に広がっている原因とは何なのでしょうか。
 原因は二点あります。
 一点目、企業側に強大な指揮命令権が存在すること。
 二点目、この命令権に労働者が対抗できていないこと。
 以上の二点です。
 まず一点目、企業の指揮命令権が強大であることについてご説明いたします。
 現状、企業側の命令権が及ぶ範囲は明確ではありません。このため企業は、労働者にさまざまな命令をすることができてしまいます。労働者側も、人事権・業務権といった企業の権利の前では不当な命令を受け入れざるを得ないのです。
 この命令権は日本型雇用システムの慣習が生み出しました。
 企業は慣習である長期雇用制を保ちつつ、競争に勝たなければなりませんでした。雇っている労働者を効率よく使わなければならなかったのです。そのために、企業は長時間労働やサービス残業を労働者に課してき ました。そのため企業は強い指揮命令権を求め、その命令権を使ってきたのです。
 続いて二点目の、強大な指揮命令権に労働者が対抗できていない点をご説明致します。
 そもそも労働問題は、法律では対処のしにくい問題です。法律は基本的に私人間の契約には踏み込めませんし、全ての問題をカバーすることはできないからです。かといって、個人的に企業と対決するのは、費用は時間などの面から厳しい。そこで、この状況に対応するために、労働組合があるのです。
 労働組合とは、団結権・団体交渉権・争議権という労働三権を行使し、労働者の権利を守るための団体です。労働組合法には、労働組合からの交渉要求を企業は拒否できないと定められています。それゆえ、労働組合は、企業との交渉を行うことで、法律では対処のしづらい個別的な労働問題にすばやく対応することができるのです。
 しかし、日本型雇用システムの中では、それが十分に機能しませんでした。
 違法労働に対しては、本来、労働組合が企業に対抗していくことが期待されていました。しかし、長期雇用と年功序列型賃金という制度は、違法労働やハラスメントを受けてでも得たい魅力的なものでした。その結果、労働者自身が企業に抵抗することが、大きな流れにならなかったのです。
 さらに、日本の労働組合は、企業別組合が大半です。このことによって、組合が企業の影響力から逃れることができません。その結果、労働組合はしばしば企業に従属的な組合になってしまい、労働組合としての力を有効に活用することができなかったのです。
 このようにして争える環境が整わなかった結果、企業と争わずに穏便に済ませようという権利意識の低下が発生しました。そして、ますます企業の強大な指揮命令に対抗できないという負の循環に陥ってしまったのです。


【対抗の必要性】
 現在では、年功序列型賃金と終身雇用制という慣行は解体に向かっています。しかし、その制度が生み出した指揮命令権を企業は今でも都合のいいように利用しているのです。安心した労働環境を実現するためには、この命令権に歯止めをかけることが必要です。そのために、労働者が企業と戦える環境を作ることが必要なのです。


【政策提案】
 以上の点を踏まえ私は以下2点の政策を提案致します。
 1点目『労働者の地域・産業別労働組合への加入義務化』
 2点目『地域・産業別労働組合に加入している労働者雇用の義務化』
 以上の2点です。
 まず、1点目の『労働者の地域・産業別労働組合への加入義務化』についてご説明致します。
 現在の労働組合への加入率は17.7%と低く、労働者は労働組合を活用しているとは到底言えません。そこで労働者に対して地域・産業別労働組合への加入を義務化します。地域産業別労働組合とは、従来の企業単位の企業組合とは異なり、地域や産業を1つの単位として結成される労働組合です。地域産業別労働組合は企業を1つの単位としていないため、企業の御用組合にはなりにくいというメリットがあります。
 地域・産業別労働組合への加入を義務化することによって、全ての労働者は労働組合に加盟することになります。そして、企業の強大な指揮命令権に対して地域・産業の労働者全体で対抗することができ、労働者の権利を守り、労働者が安心して働ける労働環境が実現します。しかし、この政策だけですと、現在、地域産業別労働組合がない分野の労働者が加入できず、地域産業別労働組合が全ての労働者に利用されなくなってしまいます。
 そこで、2点目の『地域・産業別労働組合に加入している労働者雇用の義務化』についてご説明致します。この政策は、企業は、地域・産業別労働組合に加入している労働者から雇用しなければならないというものです。この政策を実施することによって、地域・産業別労働組合を結成する動きを活性化します。その結果、現在、地域産業別労働組合が存在しない分野でも地域産業別労働組合が結成され、全ての労働者が労働組合のメリットを享受することができます。またこの政策は、1点目の『労働者の地域・産業別労働組合への加入義務化』を実施することで、全ての労働者が地域産業別労働組合へ加入するので雇用の制限にはなりません。



【展望】
 2013年流行語にブラック企業という言葉がノミネートされました。企業の悪質な労働環境がようやく明るみにでたのです。今こそが従来の企業と争わず、企業のやりたい放題になってしまった現状を変えるチャンスなのです。これからの労働の世界を明るくするのか、それとも暗くするのかは我々1人1人にかかっているのです。1人でも多くの労働者が安心して働ける労働環境を実現し、労働の世界を明るくしようではありませんか。
 「ニッポンの労働者よ、団結せよ!」

 ご清聴ありがとうございました。



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