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演題 「誰が為の政治」

弁士 海野雅大(政経1)

【導入】
 地方創生。
 最近、よく目にする言葉です。
 90年代から始まった地方分権は、地方自治体の権限を強化してきました。
 世はまさに、地方の時代なのです!
 ですが、その改革の中に欠けているものが存在します。
 それは、住民の声を反映する手段です。


【地方自治の理念】
 そもそも地方政治は、地元に寄り添うことが求められます。
 その地域の実情に適した政策を実施することが必要だからです。
 だからこそ、地方政治には国政よりも多くの住民参加の制度が存在するのです。
 たとえば、住民が議会の解散や条例制定の請求ができる直接請求制度は、地方自治に特有の制度です。


【現状分析】
 しかし現在、自治体は住民に寄り添っているとは考えられない状況にあります。
 全国の地方自治体で、住民の声との乖離が発生しているからです。
 最近の例は、鳥取市庁舎住民投票です。
 住民投票とは、地元住民が一つの政策に対して投票を行い、その是非を決めるものです。
 鳥取市では、市庁舎をテーマに住民投票が実施されました。市庁舎を新築するのか、それとも改修して使い続けるのか。
 投票の結果、改修派が過半数の票を獲得しました。
 ところが、市長はこの結果を無視して、市庁舎新築の計画を進めたのです。
 このような事例は、全国の有権者を不安にさせます。
 読売新聞の世論調査によれば、地方議会が住民の意思を反映しないと感じる人の割合は64%を占めました。
 このように、住民と自治体が乖離する状況が存在するのです。


【原因分析】
 ではなぜ、住民の声が簡単に否定されてしまうのでしょうか。
 それは、住民投票を定めた国の法律がないからです。
 現在、住民投票を望む住民は、投票条例の制定を直接請求するしかないのです。
 この結果、二つの問題が発生します。
 一つ目、住民投票条例が制定されにくいこと。
 二つ目、住民投票の結果が反映されにくいこと。
 まず、一つ目の住民投票条例が制定されにくいことについて。
 現在、住民投票条例が制定されなければ、住民投票は実施されません。
 そして、議会が条例の議決権を握っているため、議会次第で住民投票条例が制定出来るかどうかが決まってしまうのです。
 実際に、これまで請求された条例のうち、90%の住民投票条例が否決されました。
 住民は、住民投票条例の制定というスタートラインにすら立てないのです。
 次に、二つ目の住民投票の結果が反映されにくいことについて。
 そもそも、地方議会は国会の定めた法律の範囲内でしか条例を制定出来ません。
 そして、地方自治法により、自治体の最終決定権は首長や議会に存在するとされています。
 つまり、地方自治体は自治体の最終決定権を侵害しないように条例を制定する必要があります。
 そのため、住民投票の結果を自治体に強制する条例の制定は出来ないのです。
 実際に、鳥取市では投票結果を無視する事例が発生しました。
 住民の声が示された場合でも、政策への反映というゴールにたどり着けないのです。


【解決策】
 そこで、私は住民投票法の制定を提案します。
 まず、発議権は住民が持つものとします。
 発議の要件は、有権者の25%より多い数の署名とします。
 そして、これを満たした住民投票の実施を自治体に強制します。
 また、投票結果は自治体を拘束します。
 この政策によって、住民の声はより直接的に自治体に届きます。
 この結果、住民が主体となった地方自治が実現できるのです。


【展望】
 地方創生のスローガンの下、分権改革が進められている現在。
 世はまさに、地方の時代です。
 しかし、それは誰が為の政治か。
 それは住民のための政治であるはずです。
 私は住民の時代が到来することを願っています。
 ご清聴感謝します。



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