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演題 「醜い人間たち」

弁士 喜多晴行(法1)

【導入】
 ああ!なんて醜い!!
 どうして人は自分より優れた人間を見て、嫉妬をしてしまうのだろうか。
 どうして人は自分より劣った人間を見て、見下してしまうのだろうか。
 人間が社会的動物である限り、全くの平等なんて存在しない。
 それは解りきったこと。しかし私たちは無意識のうちに、その差を受け入れることができず拒絶してしまうのです。
 この拒絶が感情から行動へと変わったものが、「いじめ」として多くの人を傷つけてきました。
 私もかつて、いじめをうけた経験があります。
 繰り返されるのは「最悪」の日常。
 学校に行きたくない、クラスメイトに会いたくない。
 そんな思いに絶えず、さらされる日々。
 「死んだほうが楽なのでは?」そう考えたこともあります。
 しかし今はこう断言できる!それは間違いだと!
 いじめの存在は仕方のないことかもしれません。
 しかし私は自信を持ってこう言いたい!
 いじめは悪であると!!
 なくなることのない「いじめ」。特に学校内でのいじめに対して、被害に苦しむ人を1人でも多く減らし、いじめによる深刻な事態の発生を防ぐことが本弁論の目的です。
 本弁論においていじめとは「特定の人物への集団による一方的・反復的に不利益をもたらす行為」とします。

【現状分析】
 文部科学省の調査によると、いじめの認知件数は平成23年と比べて平成24年には3倍の20万件と大きく増加しています。
 しかしこれは単なる数値の増加にすぎません。
 影響を与えたのは大津いじめ自殺事件によるいじめの再社会問題化です。これにより学校はいじめへの緊張が高まり、一時的に見えてこなかったいじめが表に現れてきたのです。
 国立教育研究所生活指導センターの調査によれば、生徒のいじめの被害経験率が平成22年から24年の間は40%前後とほとんど変動していません。
 つまりいじめの発生件数自体はまったく減っていないのが現状です。
 では実際にいじめの被害者はいじめを受けることでどのような深刻な事態に陥っているのでしょうか。
 例えば精神疾患が挙げられます。
 オックスフォード大学での調査によると、青少年のうつ病の約30%はいじめが原因とされています。
 また自殺という問題にもつながります。
 国立病院機構大阪医療センターの調査によるといじめの被害経験の有無で自殺未遂の経験が5倍の差があるとされています。
 以上のように、いじめという行為は被害者となる生徒に深刻な被害をもたらす最悪な行為なのです!


【現行制度】
 では、ここで現在のいじめに対する取り組みはどのようになっているのでしょうか。
 政府は大津事件をきっかけに「いじめ防止対策推進法」を制定しました。この法律はいじめを定義し、防止に向けた国や自治体、学校の責務を明確化しています。
 現在はこの法律をもとに、各学校はいじめへ対応しています。
 しかしこの法律を制定してもなお、学校という現場においていじめによる被害は続いているのが現状です。


【原因】
 ではどうしていじめが深刻な事態を引き起こしてしまうのでしょうか。
 その原因は2点存在します。
 1点目
 発見への対処が教師目線でのみ行われていること
 2点目
 発見後の対応の不十分さ
 以上の2点です。

 まず1点目の「発見への対処が教師目線のみ行われていること」についてご説明致します。
 現行制度では、いじめへの教師の発見方法は多く記されています。
 文部科学省の調査によると、いじめ発見の70%が学校側の発見であるのに対して、クラスメイトの報告によるものはわずか3%しか存在しないのです。
 しかし実際には学校側の発見よりもクラスメイトの発見へのアプローチの方が効果的なのです。
 生活指導国立センターの調査によると、深刻ないじめに対する教師の認知度は60%であるのに対して、クラスメイトの認知度は80%を超えています。
 現状ではこの生徒の高い認知度を活かしきれていません。
 なぜならアンケート調査を行ったとしても、アンケート自体が学校内で行われて、匿名性が保証できていない場合が多く存在するからです。
 その結果、クラスメイトがいじめを認知したとしても、自分への被害を恐れて傍観者になってしまう人が多く発生するのです。

 次に2点目の「発見後の対応の不十分さ」についてご説明致します。
 これは発見されたいじめに対する不適切な対応により、発見できたとしても、いじめはなくならずに深刻化してしまうという事です。
 生活指導国立センターの調査によると、教師によるいじめの対応により25%の生徒が「いじめはなくなった」答えています。
 しかし残りの75%が「いじめが続いている」と答えています。
 そこで現在の先生から生徒への対応を見てみると、ほとんどが注意という形で終わってしまっています。
 結果、発見しても深刻化してしまういじめが発生してしまうのです。


【解決策】
 私は「いじめ」による悲惨な被害者を1人でも多く救うために、2つの解決策をここで提示したいと思います!

 1点目
 いじめ撲滅用紙の導入
 2点目
 日本型ゼロトレランス制度の導入
 以上の2点です。

 まず1点目の「いじめ撲滅用紙の導入」についてご説明致します。
 これは学期終わりに一度の割合でいじめに関するアンケートを配布して、被害者本人・クラスメイトによるいじめ報告を促す政策です。
 生徒はこのアンケートを原則は家で書くこととし、無記名とします。
 その後用紙を包装した上で学校に提出し、学校・教育委員会で情報の共有化をはかります。
 それによって現状に学校で書かれるアンケートと比べて、いじめ報告者の匿名性が保障され、いじめ傍観者が勇気をもって報告者になることができます。
 また教育委員会も情報共有するため、いじめに対して複数の視点からの適切な判断を可能とします。

 次に2点目の「日本型ゼロトレランス制度の導入」についてご説明致します。
 ゼロトレランスとは、どんなに軽いいじめであっても罰を与える制度です。
 この制度はアメリカで導入されています。
 アメリカではいじめの加害者には退学も辞さない厳しい制度で、多くの州でいじめなどの諸問題に関する発生率が低下しています。
 私はアメリカのような厳罰主義的なものではなく、日本の教育現場に適した形として「日本型ゼロトレランス制度」を提唱致します。
 その具体的な方法として、「軽度ないじめ」「中間のいじめ」「長期的ないじめ」の3つに分類し、それぞれに合う対応を行うことを定めます。
 「軽度ないじめ」に関しては、掃除やボランティアなどのペナルティを与えます。
 これは単純に罰するという事ではなく、自分たちのやっていることがいじめにつながるものと理解させることが目的です。
 「中間のいじめ」に関してはクラスの3分の1以上がいじめと認識できるものです。
 これに対してはペナルティに加えていじめ特別講座を設置します。
 そこでは加害者生徒にいじめを続けることの不利益を、実際の事件などを基に認識させることを目的とします。
 道徳教育として心に訴えるのではなく、損得として頭に理解させるものです。
 「長期的ないじめ」に関しては被害者の安全を第一とし、前述の対応に加えて、加害者と被害者を物理的に離す分離制度をとります。
 ここで加害者においては特別個別クラスに編入させて、授業を行います。
 そして加害者生徒が反省していると判断できた場合に元のクラスに戻すという措置をとります。
 以上2点の解決策でいじめの発見を促し、教員の裁量によるいじめの見逃すことがなくなります。
 その結果、いじめによる深刻な事態の発生を未然に防ぐことが可能となるのです。


【終わり】
 なぜ人間はこのような愚かな行為を犯してしまうのか?
 いじめ加害者がいじめを行った過去を振り返ったとき、きっと誰もが後悔とむなしさを感じると思う。
 いじめ被害者がいじめをうけた過去を振り返ったとき、きっと誰もが悲しみと人と関わることへの恐怖を感じると思う。
 そうなのです、いじめという行為は加害者も被害者も不幸にする最悪なものなのです!
 なぜ人間はこうも醜い生き物なのか!
 このような悪を、見過ごしてしまっていいのでしょうか!
 否!断じて否であります!
 見て見ぬ振りをして得た偽りのクラスの平穏など、何の価値もない!
 いじめという悪を見過ごさない社会を、作っていこうではありませんか!
 ご清聴ありがとうございました。



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