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演題 「ワーク・ライフ・バランス」

弁士 楊建(経営2)

 「今週、残業で終電をのがし、タクシーで帰るのはもう四回ぐらいだ」
 「深夜一時前に家に帰ることはほとんどなかった。」
 これは職場で働いている先輩の生の声でした。
 彼だけではなく、まさに現在日本で働いている人のWLBは仕事だけに大きくかたよっている傾向があるのです。なぜ、いまワーク、ライフ、アンバランスとなっているかというと、その大きな原因のひとつは、長時間労働問題が存在するからです。皆さんにも就職する人は多いと思いますが。しかし、こうした長時間労働である労働環境で働きたくない、こうしたワーク、ライクを両立するのが難しいライフスタイルは要りません。現状の長時間労働問題を考えるとともに、古い労働慣行を変え、より質の高い労働環境をつくり、ワーク、ライフ、バランスを実現し、より柔軟的な働き方を唱えるのを本弁論の目的としております。

 ワーク、ライフ、バランスは生活と仕事の調和ということです。しかし、今日本の現状はどうでしょうか。

 「すでに、労働時間は長期的に減少しているのではないか」という声があるかもしれません。確かに1980年代において年間総実労働時間ピークだった2000時間前後とくらべ、近年は、1800時間前後になっており、大幅に減少しています。しかし、厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、フルタイム雇用者1人当たりの年間労働時間は、労働時間短縮政策が実施される前の1980年代の2050時間と比べ、現在は2030時間でほとんど変わっていないのが実情でした。年間総実労働時間が減少した理由も、たんなるパートタイム労働者の増加と、しゅう休二日制の普及により、土日の仕事時間が減少したことによる影響が大きいなのです。それゆえ、労働者の中で、労働時間が毎週50時間を超える労働者はほぼ30%、60時間を越える労働者も30%も存在し、いずれにしても実に厚生労働省が設定している45時間を超える「過重労働による健康障害」のガイドラインをオーバーしています。
 こうした従来からの長時間労働による悪循環が人々の仕事、生活に大きな悪影響を及ぼしています。
   
 二つの観点から見てみましょう。

 まず、労働者側からみると、長時間労働等の過重な労働が誘因となり、健康問題、過労死、労働災害等が発生します。厚生労働省の統計によれば、過去10年のあいだに、過労で自殺する人が10倍ほどに増えてきており、2013年には日本で300人が過労死している危機的な状況にあります。また、2013年における労災申請件数は900件にものぼります。
 ここでは日本には家庭における役割を、男性は仕事、女性は家事と振り分けることが多いため、結果として、男性労働者は猛烈に働き、過労死、過労自殺、メンタルヘルス不全問題に直面するとともに、家族と共有する時間を失っていきます。とりわけ、育児する必要がある家庭にとっては悩むところです。
 企業側から見ても、長時間労働により、労働者のモチベーションの低下から付加価値労働生産性が劣化することに及ぼします。日本人は今も昔もよく働いているわけですが、労働時間1時間当たりの生産性からみると、OECD加盟国中19位と低い水準にあります。

 長時間労働の大きな要因としては日本企業における職務の不明確さ、企業内コーディネーションの負担の存在です。日本の場合は、特に、欧米と比べて、職務の定義が明確でないという特徴があります。特にチームとして仕事する場合が多いので、自分の職務範囲が不明確で、自分の仕事が終わっても退社しにくい側面があります。情報の共有・伝達等、企業内コーディネーションにようする時間が長時間労働としてあらわれていたことは否定できません。

  以上の問題を解決し、ワ―ク、ライフ、バランスの促進を求め、政策として二点を提案します
  労働時間貯蓄制度の導入と休暇の付与を義務付け化

 まず、労働時間貯蓄制度の導入について説明します。時間外労働に対してわりまし賃金を払うのではなく、銀行口座のように所定外労働時間を貯蓄し、後でまとめて休暇などに替えて使える仕組みです。長時間労働が続いたとしても、その分、あとでまとめて休暇を取れるような働き方の柔軟性は高い仕組みなのです。この制度は、ドイツで導入を皮切り、 (1994 年)、オランダ(1995 年)、ベルギー(2002 年)、フランス(2005 年)なども導入しています。ドイツでは既に企業全体の約三分の二が、労働者ベースではこれより低いが半数は既に労働時間貯蓄制度を導入しているといわれています。OECD[2004]もこの制度の導入を加盟国に提言しています。時間外労働を金銭補償ではなく、休日いれ替えて補償する考え方はヨーロッパでは強まっており、ワーク・ライフ・バランス促進とも有効的なのです。労働時間貯蓄制度は自分が残業した見合いで休暇をとるので年休取得よりも気がねする必要がないという利点があります

 ではなぜ今日本に労働時間貯蓄制度が導入していないかについて説明します。現在日本において年休の取得率が50%以下に下回り、非常に低い水準であり、労働時間が貯蓄されても、なかなか自発的に休暇をとる人が少ないのです。すると、こうした制度は日本に現段階では実施することが難しいという声がありました。
 ただし、先ほど取り上げた二点目の休暇の義務付け化政策同時に実施することにより、休暇取得率の低下に持ち上げる効果を与えます
。 現状、年休取得率が50%に下回り、未消化した休暇もそのまま放置することになります。そして、休暇の付与を義務付けするには、有給取得率が法定水準に満たさない場合は、法定水準まで未消化した日数をお金に換算し、国は労働者が所属する企業に罰金を徴収するという仕組みです。
 同時に、労働時間貯蓄制度の実施することにより、労働者は長時間労働をすればするほど、休暇も貯蓄され、休暇を法定水準以上とらなければなりません。未達成した場合、休暇増加するにより、未達成に日数が多くなり、企業は国に より多くなお金を払わなければなりません。結果として、企業側は積極的に長時間労働の緩和に取り組む効果につながります。

 長時間労働を支えてきた日本企業文化、社会的規範を変えていくことも重要なのです。もちろん、文化や規範と呼ばれるものは歴史的に形成されてきたものだけに簡単に変えることができないのです。しかし、長時間労働という環境で働くことはまさに現在大きな労働問題であり、日本に就職したい私にとってだけではなく、みなさんに対しても健康な仕事、生活を迎えるために大きな壁だと思います。これからより質の高い。な労働環境、ワーク、ライフ、バランス実現できる職場を作りと皆さんとともに考えていきたいと思っております。

 ご清聴ありがとうございます。



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