【導入】
太陽の光を受けて、煌めく銀翼。
ただそこにあるだけで威圧される洗練されたフォルム。
一機の戦闘機が私の前に鎮座していた。
幼い私はそれに魅了され、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
そんな私の意識は突如響いた轟音によって、現実に呼び戻された。
私の上空を戦闘機が翔けていったのである。
これは、私が幼い頃に青森県にある航空自衛隊の三沢基地で体験したことである。
その日から、私の意識は空に向けられることになった。
ところが、私の興味関心だけでなく、偶然にも戦闘機は国防において最も重要な存在だったのである!
【戦闘機の重要性】
何故戦闘機が最も重要なのか。
国防において最も大事な戦場は空である。
空を支配することができれば、陸や海に対して圧倒的に優位な、はるか上空から攻撃を加えることができる。
逆に言えば、空を支配できなければ、日本の陸上自衛隊や海上自衛隊は圧倒的に不利な、はるか上空からの攻撃にさらされることになるのである。
すなわち、陸上自衛隊や海上自衛隊が致命的な損害を被ってしまうのだ。
ベトナム戦争の例を挙げよう。
アメリカ軍は圧倒的に優位であったが、空を支配できなかったがために、陸軍、海兵隊の多くの兵士たちの命が失われた。
コソボ紛争では、空を支配し、圧倒的優位に立っていたNATO軍の空爆によって、泥沼化していた紛争の終結が導かれた。
これは現代の日本においても同じである。
中国船が領海を侵犯し、尖閣諸島に近づこうものなら、海上保安庁がただちにこれを取り締まっている。
海上保安庁が取り締まりを行えるのは、日本が空を支配しているからなのである。
もし空を支配できなければ、尖閣諸島はたちまち中国によって乗っ取られてしまうだろう。
一方、我が国と同じく中国と領土問題を抱えるベトナやフィリピは、戦闘機を持っておらず、空を奪われたがゆえ、すでに南沙諸島を中国に占拠されてしまっている。
このように非常に重要な空。
その空を守ることができる唯一のもの。そう、それこそが戦闘機なのである!
だからこそ、戦闘機というものは国防の中核をなしてきた。
もはや戦闘機なしでは国防は語り得ないのである。
【日本の戦闘機の問題点】
ではこれから先、日本の戦闘機は空を守っていくことができるのだろうか。
その答えは否である!
航空自衛隊の戦闘機に今、大きな……とても大きな危機が迫っているのだ。
その危機は二つ存在する。
一つ目は、日本の戦闘機の耐用年数の限界である。
耐用年数とはすべての工業製品に設けられている寿命のことである。
1981年から運用されている日本の戦闘機は2030年代にはその耐用年数の限界を迎えてしまうとされている。
つまり、日本の戦闘機は近い将来、使えなくなってしまうのである。
これまで使っていた戦闘機が使えなくなる。
ならば、新しい戦闘機が日本には必要だ。
これまで日本は戦闘機のすべてを欧米から購入していた。
しかし、日本はこれまでのように戦闘機を欧米から購入することが出来なくなってしまうのである。
それは何故か。
ここで二つ目の危機が登場する。
それは国防の在り方が、欧米と日本では異なってしまったということである。
欧米の国防は、これまでの国家対国家の戦いから、あの9.11のテロが代表するように、テロリスト、つまり地上の敵と戦う方向へと進化してしまったからだ。
しかし、日本はそのように変化しなかった。
日本の国防はこれまで通り、国家対国家の戦いであり、敵の戦闘機と戦い、空を守ることなのだ。
要するに、我が国が求める戦闘機とは、欧米が求めたような地上の敵を攻撃するための戦闘機でなく、戦闘機と戦い空を守るための戦闘機なのである。
国防において戦闘機は最も重要だ。
しかし、日本の戦闘機はもうその寿命を迎えてしまう。
加えて、もう我が国は欧米から戦闘機を購入することはできない。
この状態が放置されれば、我が国は空を守れなくなってしまう!
つまり、日本を守ることができなくなってしまうのである。
【政策】
この問題を解決、すなわち日本の戦闘機がこれからも日本の空を守っていけるように、政策を提示したい。
戦闘機の国産化である!
しかし、戦闘機を国産化するためには、技術と予算が必要である。
そこで技術と予算を獲得するための政策を更に提示したい。
その政策とはただ一点、武器輸出の大幅な緩和である。
それでは、この政策によって、どのような効果がもたらされるのか。それを説明する。
武器輸出が緩和された場合、日本は海外と協力して戦闘機を開発することができる。
確かに欧米と日本の国防の在り方は違ってしまった。
しかし、中国やパキスタンと戦争を繰り広げた経験のあるインドの戦闘機は日本と同じ路線のものである。
戦闘機は二つの要素で構成されている。 一つは飛ぶための機能としての戦闘機の設計やエンジンなどであり、もう一つは戦うための機能としての実戦で積み重ねたデータなどである。
日本は飛ぶために必要な技術はもう持っている。
しかし、戦闘機に欠くことのできない、戦うために必要な技術を日本は持っていない。
逆に、インドは飛ぶために必要な技術は持っていないが、過去の戦争から得た、戦うために必要な技術をデータとして持っている。
実際に、インドが国産で開発を試みた戦闘機テジャスは、飛行に関する技術面の問題から開発が難航している。
つまり、インドは飛ぶために必要な技術を求めており、日本は戦うために必要な技術のデータを求めているのである。
このことを踏まえれば、日本はインドと協力することによって、互いの足りない部分を補いながら戦闘機を国産化することが可能となるのである。
しかし、戦闘機であれ何であれ、開発するには資金が必要だ。
戦闘機の国産化には五千から八千億円ほどの予算が必要だと言われている。
しかし、年々増額し続ける社会保障費などが財政を圧迫しており、防衛費一パーセント枠が存在する今、大幅に防衛予算を増額させるのは現実的な手段ではない。
そこで、防衛費を増額させずに戦闘機の国産化に注ぎ込み、より多くの予算を捻出するうえで、武器輸出の大幅な緩和は大いに重要である。
これまで日本は武器輸出三原則などによって、海外への武器輸出を自粛してきた。
しかし近年、武器輸出が安全保障戦略として有効であると考えられている。
しかし、現在の日本の武器輸出の権限は経済産業省の管轄下にあるので、専門的な判断を下すことができない。
そこで、防衛省に武器輸出を担当する部局を新たに作り、これまで経済産業省が管轄していた武器輸出の権限を防衛省に完全に移譲する。
これにより、専門的な判断でもって武器輸出を行うことができるようになる。
この方法を用いれば、防衛省が窓口となり、武器輸出国を政府が判断することができるので、国防上のリスクを大きく抑えることもできる。
実際に、オーストラリアとの間では潜水艦の輸出が計画されている。
政府の試算によれば、これにより得られる利益は1兆8600億円以上とされているのである。
武器輸出が可能となった場合、日本は利益を戦闘機の国産化に回すことができるようになる。
このように、日本が武器輸出を大幅に緩和すれば、戦闘機の国産化に足りない技術を補い、その上、必要な予算を得ることが可能となるのである。
結果、日本は戦闘機の国産化を成し遂げられるのである。
【展望】
あの日、私は幼い心に願った。
新たなる翼を見たい。
新たなる翼が空へと飛び立つ姿を見たい。
私は再び魅了されて、立ち尽くしたい。
新たなる翼が堂々と私の前に現れる日に。
そして私は見上げたい。
新たなる翼が、日本の空を翔けていく日に。
ご清聴、ありがとうございました。
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