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演題 「継承、そして発信」

弁士 相田真美(政経1)

【導入】
 私の家の目の前では、かつて、多くの兵士が訓練に励んでいた。裏の山には、大砲を設置するためだったくぼみがある。近くの神社の入り口は、爆風で傾いてしまっている。
 私が生まれ育った町広島は、ご存じのとおり、原子爆弾で甚大な被害を受けました。たった一つの爆弾で広島の街は一瞬にして焼野原になり、多くの人の命が奪われました。
 私が高校1年生の時、お話を伺った男性は、原爆が投下された後、広島の街は、「阿鼻叫喚の地獄絵図のようだった!」と語りました。
 日本では、これまで、二度と同じ過ちを繰り返さないように、そして、平和の意思を継ぐ次の世代の人材を育てるために、平和教育が行われてきました。そのため、現在、学校で行われている平和教育は、既存のプログラムが具体的に定められており、実践されています。
 ここで、まず、既存の平和教育における「戦争」と「平和」について定義しておきたいと思います。ここでいう「戦争」とは、民族、宗教、国家などの武力による闘争であり、また、平和の定義とは、「戦争の反対」、つまり、「戦争がない状態」ということです。
 しかし、戦後70年が経った今、もはや、従来行ってきた平和教育だけでは不十分なのです!教育を受けた者全員が戦争の恐ろしさを理解し、平和を守り、受け継いでいくために、今こそ!我々は、今ある平和教育からもう一歩、踏み出さなければならないのです!


【重要性】
 そもそも、何故私たちは、平和教育を学ばなければならないのでしょうか?日本は今、戦争などしておらず、平和な状態であるはずなのに、それでも平和を学び続ける理由はいったい何なのか?
 それは、私たちが、今ある平和を維持し、後世に受け継いでいかなければならないからです。
 教育の目的は「人格の完成、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」であると、教育基本法に記されています。つまり、これからの時代において平和を守っていくためには、国民全員が平和への関心を持つ必要があるのです。


【現状】
 しかし、今の日本はどうでしょうか? 一人ひとりが「自分は平和の担い手である」と自覚しているでしょうか?
 先ほども述べたように、現時点において日本は平和です。しかし、平和だからこそ、平和についてそれぞれが自発的に考える気かが失われているのです。つまり、教育の目標である「教育を受けた者全員が平和について考えている」状態とは、ほど遠くなってしまっているのです。


【問題点】
 では、現在実践されている平和教育は、どのようなものなのでしょうか? 私が先ほど述べた、既存の平和教育とは、「過去の戦争を検証し、そこから非戦を謳う平和教育」であります。これは、多くの方が経験されたことがあるのではないかと思います。
 実際に戦争を経験した人から話を聞いたり、戦争被害の爪痕が残っている土地を訪れたりして、戦争に対する悲しみ、怒り、恐怖を感じさせます。そして、それと対極にあるものとして平和を理解させる、というものです。すると、子供たちは平和を脅かすものとして、「戦争はいけない」「核兵器はいけない」と思うようになります。このように、現在行われているのは、子供たちの感情に訴える教育なのです。
 しかし、この教育には2つの問題点があります。
  ・戦争経験者の高齢化
  ・感情のみの教育によって起こる思考停止
 以上の2点です。

 まず、1点目の「戦争経験者からの聞き取り」について説明していきたいと思います。
 戦後約70年が経った今、戦争経験者は、当然のことながら、どんどん高齢化しています。このままでは、「戦争経験者からの聞き取り」という、平和教育の中で重要な項目が、実践できなくなり、教育プログラムに大きな穴が空いてしまいます。この穴を埋めるべく、私たちは、これに匹敵するような新しいアプローチを考えていかなければならないのです。

 次に、2点目の「感情のみの教育によって起こる思考停止」についてです。
 戦争の恐ろしさを理解するために戦争経験を伝承する方法は、非常に有効な手段であり、これからも継続されるべきです。しかし、これだけでは足りないのです。現在の平和教育は、子供たちの感情に訴えかけることをメインとしています。そのため、平和教育は「受け身」のものになってしまい、「戦争はダメ」「平和は大事」といった段階で思考停止してしまうのです。よって、「戦争」が何故起こったのか、それによってどのような事態が生じたのか、という客観的な理解をすることが難しくなってしまっているのです。


【解決策】
 以上を踏まえ、私は、既存の教育プログラムの強化と、生徒が主体的に平和維持を考えるために、以下2点の政策を提案致します。
  ・小学校向けの、新しい伝承方法の確立
  ・中学生、高校生が、平和について主体的に考えるプログラムの確立
 以上2点です。

 まず、1点目の「小学校向けの、新しい伝承方法の確立」について説明していきます。既存のプログラムにおいて、戦争経験者の高齢化によって空いてしまう穴を埋める必要があります。
 そこで、戦争経験者の高齢化を補うために、戦争経験や、戦争経験談を記録した情報資料を活用した授業を行います。これにより生徒は、今後も変わらず、悲惨な戦争の実相を現実に起こった事実として受け止め、こうした惨劇を二度と繰り返してはならないと心に刻むことが出来ます。小学校では、「戦争の悲惨さ、恐ろしさを理解する」ことを重視した、こういった体験型学習を行うこととします。6年間にわたって教育することで、平和について考えるうえでの土台が形成できます。

 続いて、2点目の「中学生、高校生が、平和について考えるプログラムの確立」について説明します。平和の維持・発展のためには、戦争経験の伝承だけではなく、これから平和を築いていく人材を育てる必要があります。そのために、中学校、高等学校では、平和を維持していくために解決すべき課題について考える授業を行います。
 これによって、「自分自身が平和な社会を形成していく人材である」ということを生徒一人ひとりが認識するのです。現在の日本にはどのような問題があって、それによって何が引き起こされているのか、を学んだうえで、その問題に対して生徒自身がどのように思うかを考えさせるのです。

 このような実践型の学習を行うことで、生徒一人ひとりが、自分が平和を守っていくのだという意識を持つことが出来ます。
 以上2点の政策により、戦争の恐ろしさを心に刻み、教育を受けた者全員が平和に対する意識を確立させていけば、戦争の記憶がなくなることも、これからの社会で平和が脅かされることも、もちろんありません。


【展望】
 「安らかに眠って下さい 過ちは 繰り返しませぬから」これは、原爆死没者慰霊碑に刻まれている碑文です。この碑文にあるように、私たちは、二度と、戦争という過去の悲惨な過ちを繰り返してはならないのです。
 日本はこの70年間、平和な時代を過ごしてきました。私たちはその平和を守り、次に世代に受け継いでいかなければなりません。それは、過去の悲惨な戦争の経験についても同じことです。
 しかし、過去ばかりを眺めて感傷に浸っているだけでは前に進むことは出来ません!平和の担い手である私たち一人ひとりが、意思を持ち、平和を守っていこうとする社会を自身の手で築いていかなければならないのです!

 ご清聴ありがとうございました。



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