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演題 「新たな刺客」

弁士 清水正大(政経1)

【導入】
 成すべきだ、が多すぎる。
 なぜ、私が成すではないのか。

 私はこの場を借りて、私が成すことの話をする。
 私がこれから成すことに諸君が共感し、参加を求めること。
 それこそが本弁論の目的である。


【ある男の話】
 ではさっそく、ある男の話をしよう。
 その男の夢は、歴史に名を刻むこと。
 その手段として彼は、内閣総理大臣を志している。
 そんな彼は、明治大学に入学し、雄弁部の門を叩いた。
 政治を一所懸命に研究し、雄弁に主張する弁論という意思表明に魅了された。

 そして、いくつかの大会に出席する中で、二つの感情を抱いた。
 一つ目の感情は、弁論界は美しい、という感情だ。
 祖国日本を良くするために本を読み、熟考し、研究し、主張をしている若者たち。
 こんなに美しい集団があるだろうかと。

 だがしかし、もう一つの感情が生まれた。
 もったいないという感情だ。
 弁論界はこの弁論大会のごとく、社会にではなく、同じ畑の弁論界に向かって主張を行い、それを社会に対して還元するだけの影響力がないからだ。
 こうも皆が国を想い、国を良くするべく努力を重ねた結晶である主張は、残念ながら政治家そして国民に届いているとは言い難いのである。

 男は、以上の二つの感情から一つの帰結を見出した。
 この国のこれまで、すなわち過去だけではなく、これから、すなわち未来にも目を向けた政治を行うためにも、弁論界が代表するような、「若者に」政治的影響力を与えなければならない。

 この男とはまさに、今諸君の前で雄弁している、私清水正大である。


【問題提起】
 私は、ここで一点、問題提起を行いたい。
 未来を担う若者が、大人と比較して「影響力のある意思表明の手段」を事実上持っていないことだ。

 どういうことか?
 意志表明には様々な手段が存在する。
 選挙における投票、ロビー活動、デモなどだ。
 様々な意思表明の手段を駆使する際、影響力を持った意思表明ができる者達こそ大人である。

 大人は少子高齢化のもと、絶対数で圧倒し、更には、金、知名度、社会的地位、といった影響力の根源を掌握している。
 一方若者は、少子高齢化のもと、絶対数は減少し、更には金、知名度、社会的地位、といった影響力の根源を持っていない。
 政治的、社会的影響力の根源である、金、知名度、社会的地位を性質上持ちえない者達こそまさに若者なのだ。
 若者はこの影響力の根源を持たなければならない。

 だがここでもう一つ問題が発生する。
 若者が行う意思表明の中で唯一、大人と平等な手段、選挙における投票を、若者は行わない。
 年代別投票格差表を見れば、20歳~35歳の投票率と50歳以上の投票率の差の乖離は、イギリスに次ぐOECD諸国第二位というゆゆしき事態に陥っていることが分かる。

 唯一、平等な意思表明手段を行使しない若者。
 何故、若者は選挙に行かないのか。
 若者は政治的無関心に陥っているのだ。
 俺一人、選挙に行ったところで意味ねーよなー。
 政治なんて難しくてわかんねー。
 この若者を取り巻く、政治的無関心が、唯一平等を担保された意思表明手段を錆びつかせている。
 自分の行動によって、民主主義が形成されているという価値観の醸成。
 政治知識、政治的関心の想起が必要である。


【解決策(若者会)】
 だからこそ私は、性質上影響力を持ちえず、政治的無関心に陥った若者に、影響力を与え、新たな価値観を醸成し、政治知識、政治的関心を想起させる、意思表明手段を提案する。

 そのある意味革命的な意思表明手段こそ、若者会である。
 いったい若者会とはどういうものなのか。
 説明させていただく。

 若者会とは圧力団体である。
 会員制を採用し、会議の中で支持政党、及び、支持候補者の決定、発表を行う。
 この会議におけるコンセンサスは、全会員による多数決で決定する。
 判断基準の一要素として、若者に目を向けた、政党及び、候補者を選別する。
 そして、投票権のある会員は決定した政党、候補者に組織票を投票する。
 18歳~24歳の若者の1パーセントが入会したとしても、日本弁護士連合会を上回る規模の、圧力団体となる。
 政治家にとって最も直接的利益となる、選挙における組織票を若者会が握るのだ。

 自分たちと同世代の若者会が、若者の利益を考え、若者に利益をもたらす政党、候補者を決定、発表する。
 これが、若者に政治知識を与え、政治的関心の想起をもたらす。
 そして、多くの若者が、自分たちの利益のための投票を行うことで、若者の意思を反映する政党、候補者が、実際の政治の場で、若者にも目を向けた政治を行うのだ。

 この若者会の会員数が増加するにあたって、若者会の活動を円滑化するための、あるシステムを付け加える。
 それは、若者国会である。
 80名の枠を、人口比例に基づき、各県に割り振る。
 若者会のメンバーで選挙を行い、若者会の代議士を選出する。
 任期は一年。
 各県から選出された若者国会議員は若者国会という名の会議を開く。
 若者国会議員は、国政選挙の前に、召集され、支持政党、支持候補者の審議、決定を行う。

 若者国会、会期中「以外」の期間は、県ごとの若者支部会で、地方活性化や、その地方特有の問題の解決策を、若者国会議員を中心に議論する。
 そして、その解決策を地方自治法の定める直接請求制度にのっとり、条例の制定、イニシアティブをとる。

 「地方自治は民主主義の学校である」
 自分にとってより身近な地方自治において、政治参加していくこと。
 自分の行動が、条例制定の発案という「形」になることで、自らの行動が、民主主義を形成しているという価値観の醸成を可能とするのである。

 この若者国会のシステムが加わった若者会という、意思表明手段を手に入れることで若者は、自らの政治的無関心を打破することができるのだ。

 この若者会に影響力の根源の一要素である知名度を加える。
 若者会をメディアによって報道するのである。
 審議の様子、決定事項などを、日本の社会に向かって発信していくのだ。


【解決策(Global Arch)・展望】
 では、影響力の根源の残り二つ、金、社会的地位はどうやって担保するのか?
 私は本弁論の最初に述べた、私が成す、と。
 私は第三弁士小野と、志ある仲間と共に、今、学生起業をなそうとしている。
 その団体名はGlobal Arch。
 何故か。
 影響力を持つためである。
 我々は自らが力をつけ、この若者会を創る。
 運営費などを全く述べなかった理由は、誰かにつくってもらう気がないからである。
 影響力の根源である金、すなわち活動資金、社会的地位はGlobal Archが担保する。

 若者会が実現されれば、若者は、新たな価値観を醸成し、政治知識、政治的関心を持って、投票に行く。
 さらに、影響力の根源を担保された、意思表明手段を手に入れることができるのだ。
 だが、影響力の根源を担保しなければならない、我々Global Archはまだまだ、未熟である。
 さらに、他国に比べて、日本では、若者が政治参加する文化は醸成されていない。

 何が言いたいのか。
 初めは草の根でスタートする、ということだ。
 そのスタートラインが本弁論である。

 私は諸君に共感、そして参加したいと感じてもらえたかが知りたい。
 冒頭でも申し上げたが、諸君は、周りの若者が大して政治を必要と感じていない中、祖国日本を良くするために、本を読み、熟考し、研究し、こうも雄弁に主張をしている。
 弁論界は美しい。
 その美しき諸君に若者会を評価してもらえる。
 この身に余る光栄を享受する。
 そして、Global Archと、若者会という「新たな刺客」が、ニュースシーンをいろどる未来に、期待する。

 ご清聴、ありがとうございました。





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