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演題 『「無料」という名の誘惑』

弁士 橋本修平(情コミ1)

【導入】
 私は日本のサブカルチャーが大好きだ!
 周知の通り、日本のサブカルチャーは国内だけでなく、海外でも広く人気があります。
 日本のコンテンツ産業、すなわち、音楽を始め漫画やアニメ・ゲームなどの流通・販売を担う産業は、アメリカに次いで世界第2位。
 その市場規模は約12兆円にも上ります。
 しかしその日本のサブカルチャー、そして、日本のコンテンツ産業に大きな暗雲が立ち込めているのです!
 そう、それこそ、著作権法に違反した違法ダウンロードの横行であります。

 現状YouTubeを始めとした動画サイトやWeb上には、違法なコンテンツが溢れており、我々もそれらのコンテンツを無料で見たり、はたまた無料でダウンロードしたりすることが、いとも簡単に行えます。
 そう、今やお金を払って観たり聞いたりするべきものを、タダで視聴したり手に入れたりしています。
 そう、『無料という名の誘惑』に負けてしまっているのです。
 私は日本のコンテンツ産業を守りたい!
 世界からも人気を集める我が国日本のコンテンツ産業を守るためにも、今こそこの誘惑に勝たなければならない!

 本弁論では、日本のコンテンツ産業を守るために著作権法違反行為、特に違法ダウンロード問題を取り上げていきたいと思う!


【現状分析】
 現在、日本のコンテンツ産業は、違法ダウンロードによって甚大な被害を受け続けています。
 例えばインターネット上に違法に存在するゲームをタダでダウンロードできるマジコンという機械によって、2004年から2009年までの6年間で、国内だけでも9000億円以上の被害が出ています。
 さらに音楽の違法ダウンロードによる被害は、2011年の1年間だけでも6600億円以上に上るのです。

 ちょうど1年前の昨年10月、こうした違法ダウンロードを防ぐために、改正著作権法が施行されました。
 この法律により、違法ダウンロード、つまり、ネット上に違法に存在するコンテンツを、違法と知りながら録音・録画する行為については、2年以下の懲役または200万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられるようになりました。


【問題点】
 しかし、この現行の著作権法には大きな問題が2点あります。

  1点目、違法にアップロードされた画像・プログラム及び文書をダウンロードする行為についての規定が存在しないこと。
  2点目、著作権の違法ダウンロード条項が運用されていないこと。

 以上の2点です。

 まず1点目の「違法にアップロードされた画像・プログラム及び文書をダウンロードする行為についての規定が存在しないこと」について説明します。
 現在の著作権法で『違法ダウンロード』とされるのは、違法に存在するコンテンツの『録音・録画』のみであります。
 つまり、ネット上に違法に存在している、漫画を始めとした画像や、ゲームなどのプログラム、小説などの文書をダウンロードする行為は規制の対象ではありません。
 これでは私の理念である「日本のコンテンツ産業を守る」ということは到底達成されません。

 次に2点目の、「著作権の違法ダウンロード条項が運用されていないこと」について説明します。
 改正著作権法が改正され1年が経ちましたが、未だに違法ダウンロード行為による逮捕者は出ておりません。
 つまり、法の持つ「違法行為への抑止力」が十分に発揮されていないのです。
 現に、違法ダウンロードについては著作権法で規制されていますが、私の友人の中には未だに違法ダウンロード行為を行っている人もいます。
 実際、文教大学が行った調査によると、昨年10月の改正著作権法の施行後も全体の22%が未だに違法ダウンロードを繰り返しているのです。
 つまり、違法ダウンロードは法律上存在しているだけで、実際には上手く機能しておらず、抑止力として十分に働いていないのであります。

 さて、著作権法は『親告罪』という性質上、権利者側からの告訴がなければ警察は動けません。
 では、違法ダウンロードによる逮捕者が出ていないのは、権利者側が告訴してないからでしょうか?
 否、それは違います。
 権利者側はきちんと告訴は行っているのです。
 現に、日本レコード協会に問い合わせたところ、
 「違法ダウンロードに対し告訴は行っているが、警察が動いてくれない。警察はより違法性の高い不正アクセスや児童ポルノばかり規制している」  と、広報担当者の方が仰っておりました。
 つまり、全体としてみれば違法ダウンロードは甚大な被害が出ておりますが、個別一人ひとりに関して見れば被害は小さい。
 よって、警察側も限られた人員の中で、より違法性の高い不正アクセスや児童ポルノ、ハッキングなどに人員を割いているのです。
 実際、埼玉県警サイバー犯罪対策課に問い合わせたところ、サイバー犯罪対策課自体、人員不足であるとの回答が得られました。
 それでも世界に誇れる日本のコンテンツ産業の成長を阻害している行為を見過ごして良い訳がありません。


【解決策】
 ではどのようにすれば、これら違法ダウンロード問題を解決できるのでありましょうか。
 そこで私は以下2点の政策を提案いたします。

  (1)ネット上に違法に存在する画像やプログラム、文書のダウンロードについての刑事罰則規定を追加すること。
  (2)新たに各都道府県警察のサイバー犯罪対策課にコンテンツ犯罪対策室を創設すること。

 以上の2点です。

 まず1点目の、『ネット上に違法に存在する画像やプログラム、文書のダウンロードについての刑事罰則規定を追加すること。』について説明します。
 これは先ほども述べました通り、現状、ネット上に違法に存在する漫画やゲームや小説などをダウンロードすることについては、著作権法ではなんら規定は設けられていません。
 そのため違法漫画やゲーム、小説などのダウンロード行為については規制の対象外となっております。
 これでは私の理念である日本のコンテンツ産業の保護というものは達成されないため、このような規定を盛り込ませていただきました。
 これにより、今まで不可能であった違法画像やプログラム、文書のダウンロード行為についても,音声や映像などと同様に摘発することが可能となります。

 次に2点目の『新たに各都道府県警察のサイバー犯罪対策課にコンテンツ犯罪対策室を創設する』ということについて。
 先ほども述べたように、現状違法ダウンロードによる逮捕者は出ておらず、法の抑止力は十分に働いておりません。
 それは各警察のサイバー犯罪対策課の人員不足によるものが非常に大きい。
 そのため各サイバー犯罪対策課に新たにコンテンツ産業の保護に特化した組織を創設します。
 これにより、今までサイバー犯罪対策課内で人員が不足していたために違法ダウンロードまで手が回らなかった状況を打開いたします。

 国が、ある行為を制限しようと考えたときには法律を作ります。
 しかしその法律が何の効力も発揮しなかったら、いくら国がダメだダメだと言い続けてもそれは国民には届きにくい。
 実際にその法律に違反した者を摘発して初めて国民の意識変革は望めます。
 飲酒運転や学校での体罰問題は、実際に検挙または逮捕者を出したことで、社会的意識の改革に成功しています。
 法律の条文が存在するだけでなく、実際に効力を発揮してこそ社会意識の変革はなされるのであります。


【展望】
 もう1度言いましょう。
 私は日本のサブカルチャー、そしてコンテンツ産業が大好きだ。
 そして誇りに思っている!

 しかしそのコンテンツ産業が『無料という名の誘惑』によって傷つけられている!
 今こそ、我ら日本が世界に誇るコンテンツ産業のさらなる活性化のためにも一歩前に踏み出そうではありませんか!
 ご清聴ありがとうございました。



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