【導入】
59.32%
この数値が何の数字だか、皆さん、分かりますか。
そう、これは先日の衆議院選挙の投票率。
過去最低だ、などとメディアを騒がせている。
では、0.0015%
この数字は何だろう。
極めて低い、ということぐらいは分かるだろう。
正解は、被選挙率。
つまり、被選挙権を持っていて今回の衆院選に実際に立候補した人の率である。
実に少なく感じるだろう。
しかし、この0.0015%がなければ。
選挙は、議会制民主主義は決して成り立ちえないのである。
【重要性1】
その0.0015%が行使したのが、被選挙権だ。
被選挙権は一般に「選挙に立候補できる権利」のことを指す。
これは、憲法が保障する基本的人権の一つである。
本弁論では、この被選挙権を
「財産、性別による差別なく、同程度の条件を持って選挙に立候補できる権利」
と定義します。
これは、選挙の4大原則の1つ、普通選挙の財産・性別差別の禁止、これを鑑みた定義です。
選挙権と共に、参政権の根幹をなす被選挙権
判例では「選挙権の自由な行使と表裏一体の関係」であるとされます。
議会制民主主義国家、日本。
そこで選挙権と共に参政権を支える被選挙権。
これは極めて重要な権利なのです。
【重要性2】
被選挙権は普段、重要性を感じ難い権利の一つかもしれません。
しかし、「いざ」という時に、その権利を十分に行使できないのは極めて危険です。
政治が方向を見誤ったとき。
ある主張に対し、政治が聞く耳を持たないとき。
その「いざ」というとき、既存の政治に受け皿を失った我々は
自ら立たねばならないのである。
その時に、我々を支える権利。
それこそが被選挙権なのである。
【問題点】
しかし、現在、被選挙権の行使を妨げる問題が3つ存在している。
1点目、供託金が存在すること
2点目、国による補助に申請の制限が存在すること
3点目、特に国政選挙で個人負担が高額なこと
以上の3点である。
これらの問題は事実上の財産による制限として、被選挙権を脅かしているのである。
1点目の供託金について。
供託金とは、選挙に出る前に国に納めるお金のことである。
金額は衆参の小選挙区で300万。比例は600万。
地方選挙でも県議会で60万、市議会では30万が必要。
しかもこのお金は、一定の票を得ないと没収されてしまいます。
この供託金が、被選挙権の行使を妨げているのです。
実際に、今回の衆院選でも、立候補を試みた市民団体の女性が供託金を準備出来ず、断念せざるを得なくなるという事態が発生しました。
2点目の国による補助の申請制限について。
選挙費用の国による補助。
これは公平な機会提供を目的とした「選挙公営制度」によるものである。
これにより、立候補者は費用を一定額国からで賄ってもらえる。
しかし、この補助には制限がある。
一定の票を得られず、供託金を没収された人。
その人は国の補助を受けられないのです。
この制度は、資金力がないものの立候補を妨げている。
3点目の国政選挙の個人負担について。
選挙に不可欠な選挙費用。
市議選では100万円、県議選では200万円程度。
100~50万程度は補助が出るので、個人負担は高くても100万円程度です。
しかし、国政選挙は異なっている。
03年衆院選での1区当選者の選挙費用平均が約1300万円。
補助を引いた個人負担額は約1000万円にも上るのです。
被選挙権を得たばかりの30代前半の平均所得は384万円。
その3倍近くにも昇る金額であるのです。
実際に、今回の衆院選でもこの個人負担の高さが出馬を妨げる事態が発生しました。
日本維新の会で京都1区から擁立された会社員の男性
彼は「資金難」を理由に出馬を断念、他の候補と差し替えられてしまうこととなったのだ。
【原因】
これらの問題は立候補への事実上の財産制限を生んでいます。
このことは、普通選挙の理念に鑑み、決して許されてはならないことなのだ。
では、なぜ供託金制度と補助の申請制限は存在し、個人負担は重くなるのか。
原因は2点ある。
1点目、売名目的の立候補が心配されるため
2点目、国の補助の適用範囲が狭いため
以上の2点です。
1点目の売名目的の立候補について
供託金制度。
総務省によると、その目的は「売名目的での立候補の防止」
売名目的の真に戦わない立候補者が出ることを防ぐため。
「一定の線引き」として供託金制度が必要である、とのことである。
また、そのような人の補助はできない、との考えから補助金の申請も関連して制限されている。
国は、売名行為防止の線引きとして、供託金制度を必要としているのだ。
そのため、供託金が存在し、補助の申請も制限されている。
2点目の補助の適用範囲の狭さについて
選挙公営の考えに基づき行われる国による補助。
しかし、適用範囲が狭く、個人費用負担が高くなっている。
補助が行われるのは選挙カー、ビラ、ポスターなど。
選挙費用で「広告費」「印刷費」と呼ばれるものである。
これらは03年の衆院選1区当選者の費用の約3割を占め、補助が必要であることは分かる。
しかし、合計で費用の約4割を占め、同様に重要な「人件費」や「選挙事務所費」はその対象外となってしまっているのだ。
特に国政選挙に於いては、作業も多く、人手が沢山必要となる。
人手を集めることと、作業のための事務所は極めて重要なのである。
しかし、その費用は補助されない。
ゆえに、立候補者の自己負担は高くなるのである。
【政策】
これらの原因は事実上の被選挙権の財産制限を生み出す許されざるものです。
よって、私はこれら原因の解決の為2点の政策を打たせて頂く。
1点目、推薦状制度の導入と供託金の廃止
2点目、国政における人件費、選挙事務所費への補助拡大
以上の2点である。
1点目の推薦状制度の導入と供託金廃止について
これは、推薦状を供託金の代わりとして用いる政策です。
供託金の目的である売名行為の防止のための「一定の線引き」
その役割を、推薦状によって代替するのです。
具体的には、候補者へ推薦状を与えるという現在の選挙で行われている慣習を制度化します。
立候補を望む者は推薦状を一定枚数集め、それを「一定の線引き」とするのです。
この制度はアメリカを初め、フランス、イタリアなどで導入されている立候補のための署名制度と近いものです。
このことで、売名を目的とする無責任な立候補を抑制出来ます。
よって、供託金制度は不必要となり、廃止できるのです。
それに伴い、供託金を没収されたものが選挙費用の国による補助を受けられないという制度も無くなります。
この政策により、推薦状を集めた物は財産に制限なく、国の補助を受け選挙に立候補できるようになるのです。
2点目の国政選挙における補助拡大について。
これは、人件費と事務所費を補助の対象とし、負担を軽減するためのものです。
具体的には、選挙運動費用収支報告書における「人件費」「選挙事務所費」を対象とします。
上限は各地方で定め、前回の選挙の地域ごとの平均費用を参考とします。
総務省によると国の補助は「選挙運動に共通の部分」を対象としているとのこと。
人件費、事務所費はそれぞれ85%と95%もの立候補者が使用しており国政選挙での「共通」の運動であるとみなすことが出来ます。
この政策により負担が軽減され、資金難で立候補できないような事態を防ぐことが出来るのです。
【展望1】
以上2点の政策により
供託金と補助申請の制限、高い選挙費用といった問題が改善されます。
このことで、立候補の事実上の制限は撤廃されるのです。
【展望2】
夢は国会議員。
大学に入学したころ、私はそう言っていた。
その思いは今も変わらない。
しかし、夢を聞かれても口ごもることが増えた。
選挙の事情を知り、選挙事務所に出入りし。
立候補が大きな壁であることを思い知らされたのだ。
しかし、私は雄弁部員である。
社会問題に向き合い、何とかならないかと模索する。
その成果を、人前で声高に訴え、説得を試みる。
そんな、雄弁部員である。
近い将来。
自分の理念にぶつかる社会の動きに直面した、その「いざ」というときに。
私は、それを良しとせず、選挙に打って出たいと考えている。
我、財産による制限被選挙から、普通被選挙を請願す!
ご清聴ありがとうございました。
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