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演題 「『愛の制度』を考える」

弁士 櫻井大智(政1)

【導入】
あなたは、自らの「愛」を認めてもらいたいと思いますか。
自らの「愛」が正しいと、胸を張って言えますか。
何らおかしくはない。尊重すべき、美しい「人の愛」であるにもかかわらず、愛が社会的に認められていない人たちがいます。
自身の愛は間違っているのではないかと、考えてしまう。
愛する人と家庭を築くことが、出来ない。
そんな人たちがいます。
そう。彼らは、LGBTと呼ばれる人たち。いわゆる、同性愛者です。
【分析】
LGBTとは、【レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー】の頭文字を取った、同性愛者の一般的な略称です。

あなたは今、彼らにどんな印象を抱いているでしょうか。
その印象に関わらず、前提として一つ、知って欲しい事があります。
「同性愛は異常ではない」ということです。
WHOの見解、又、精神医学に関する世界的指針であるDSM-4でも、同性愛は「異常」「精神疾患」とはみなされていません。
性的指向は自らの意思で変更できるものではなく、治療の対象から外されています。

このように、同性愛者は、決して異常ではない、愛を持った一人の人間であり、その愛は、曲げることのできないものなのです。
その同性愛者は、調査によれば、国内に、20~59歳の人口比で、4%。約280万人も存在しているとされています。

近年、同性愛者の権利が世界的に注目されています。
つい先日もオバマ大統領が同性婚支持を表明、大きな話題となりました。
既に、ニューヨーク州やアイオワ州、欧州ではオランダやスペイン等が同性婚を合法化しています。
ところが、日本では、同性カップルには、未だ結婚が認められていません。
そのことで悲しんでいる、不便な思いをしている同性愛者の方が多くいます。
現に、調査によれば、6割もの同性愛者が「日本にも同性婚の制度があればいい」と考えているのです。
【問題点】
日本の同性カップルが抱える問題。
それは法制度上、価値観上の二点です。

法制度上の問題点は、結婚とそれに伴う権利が認められていないこと。
価値観上の問題点は、社会的に理解が足りないこと。
以上の二点です。

第一の、結婚と権利が認められていないことについて。
憲法第24条や民法・戸籍法では両性、夫婦という文言から、結婚は男女によるという前提が定められています。
これにより、同性カップルには結婚とそれに伴う権利が認められていません。
具体的には、終末期医療でパートナーの治療方針を決められない。
家族でなく介護休暇が認められない、など様々な不備が生じています。

第二の、理解不足について。
現在、日本の同性愛者は様々な生きづらさを感じています。
例えば、「同性愛者であることを悩んだことがある」のは約7割、「テレビで同性愛者をネタにしているのに対してストレスを感じる」のは6割を超えています。
又、市民団体である「動くゲイとレズビアンの会」が、同性愛者の団体であるという理由から、府中青年の家の利用を拒否されるという事件も起きています
このように日本では未だ同性愛者への理解が進んでいないのです。
【原因】
では、この2つの問題の原因は何でしょうか?
どちらの問題も、根本的には同じ出来事に起因しています。
それは、明治時代における、当時の誤った西洋精神医学の流入です。

同性愛を異常性愛とする当時のヨーロッパの精神医学。
その流入により、日本でも同性愛を病理的とみなす風潮が生まれました。
実際、当時の日本の性科学者の著作では、「不自然な性欲」「一種の伝染病」とまで論じられています。

当時のこの学説は大いに流布しました。
その結果、先ほど述べた二つの問題が発生したのです。
第一の問題点である、法で同性婚が認められていないこと。
政府が医学で「異常」とされている者を法で認めることはあり得ません。
この姿勢は、戦後制定された日本国憲法にも受け継がれています。
しかし、このような姿勢はいささか時勢に遅れたものです。
何故なら、世界的にも大いに注目を受けている、280万人の為に、制度を用意できていないのですから!

第二の問題点である、理解の不足。
明治時代の同性愛は異常との学説が大衆にまで広がり、現代の理解不足に繋がりました。
当時の大衆への影響の例として、大正時代の同性愛者の手紙に、次の文章が残っています。
「此の自分の変態な恋に苦しむ辛さを、書き綴って、理解深き先生に打ち明けて、せめてもの心やりとしたいと思います。この不幸に生まれてきた自分を、憐れんでください。」
このように、自身を「異常」と思い、深く悩むほど、当時の学説の影響力は大きかったのです。

70年代以降、同性愛は医学的に「異常ではない」と認められました。
しかし、この正しい知識は大衆に広まりませんでした。
大正時代の同性愛者の、自分は異常ではないかという苦しみ。
現代でも、同じことが起こっています。
宮崎で、同性愛者の高校生がゲイ雑誌を万引き、親を呼ばれることになりました。
彼は同性愛者であることを親に知られるのを恐れ、自殺しました。
同性愛イコール異常。この事件は、そんなイメージが未だ残っている証拠に他ならないのです!
【解決策】
以上の問題を解決するために、私が提示する政策は1点です!
それは、同性婚を完全に認めるべく、憲法24条及び民法、戸籍法を改正すること!
現在の憲法24条では異性婚が前提で同性婚の実現は不可能です。
よって、憲法24条と関連した法を改正し、同性婚を実現するのです!

しかし、改憲には国民の理解が必要となります。
その理解のために私は2つのプランを提示します!

第1に、海外のパートナーシップ法を参考にした法の導入。
第2に、同性愛への理解のための教育の推進。
以上の2点です。

第1の、パートナーシップ法について。
パートナーシップ法とは、イギリスなどで導入されている同性カップルに結婚とほぼ同等の権利を保証する制度です。
日本では、入籍以外、家族であることと等しい権利を与えることとします。
改憲までの間、この制度を導入すれば、同性愛者の短期的な権利保障ができ、何より、国民に現実的な制度として同性婚が示され、理解を生みます。

第2の、同性愛への理解のための教育を推進することについて。
これは、現在も残る誤った負のイメージを払拭するために行います。
2005年に行われた調査によれば、学校での同性愛教育について「一切習っていない」が全体の78.5%、習っていても14.6%が否定的で不適切な情報を得ているという現状があります。
更に、現行の指導要領には、同性愛についての指導が一切明示されていないのです。
そこで、性教育と同時期に同性愛理解の為の教育を開始することとします。
具体的には、医学的に「異常」ではないといった正しい知識を教える
その上で、実際に同性愛者の方の話を紹介したり聞いたりすることで、自らと変わらない、愛を持った一人の人間である「同性愛者」への理解を推進します。

理解のための教育を為すことで、負のイメージを無くし、そして得られた正しい知識が、同性婚を認める土壌を生み出すのです。

これらのプランの実行により、国民の理解を得られ、私の掲げた「憲法・民法・戸籍法の改正」が可能になるのです。
それにより異性婚と変わらぬ同性婚を実現し、それに伴う権利を同性愛者に与えることが出来るのです。
【展望】
同性愛者。あなたは今まで、彼らにどんな印象を持っていましたか。
彼らの愛は、何もおかしくない。
おかしいのは、彼らの為の制度を用意できていない我々なのです!

今こそ再び、愛の制度を考えるべきなのではないでしょうか。
社会によって冷遇される愛が、あっていいはずが無いのですから!

同性愛者が、自らの愛に、自信と誇りを持ち、異性婚と全く同じ結婚が出来るようになることを。
日本全体が、同性愛を異性愛と同じ、「普通のもの」として見られるようになることを願い、本弁論を終了させて頂きます。ご清聴、ありがとうございました。



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