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演題 「新しい日本農業」

弁士 岩村弥莉 (農1)

【導入】
みなさん、お米は好きですか?
お米は日本人に古くから親しまれ、日本の主食として家庭の食卓を彩ってきました。加えて、海外でも日本のお米は高く評価されており、「柔らかくておいしい」。「味も食感も完璧」という声があがっています。
私たちが、毎日、「高品質で安心、安全な」お米を食べることができているのは、農家の方々の日々の絶え間ない努力のおかげなのです。

しかしながら、現在、グローバル化、貿易自由化の時代とさけばれ、人・モノ・サービスの流通がますます自由にかつ増幅する風潮は、農業界においても例外ではありあません。このままでは、貿易自由化の波にのまれ、農業は壊滅的な状況になります。とりわけ、米産業が最も危機的な状況に陥るとされています。なぜなら、まず農業生産額で比べますと、一番多い畜産の3割を筆頭に、米が2割、野菜が2割、果実が1割という統計ですが、その中で高関税率で守られているのは米だけなのです。畜産の関税率は5~10%、野菜は0~3%、果実は5~15%であるのに対し、なんと米の関税率は778%もかけられているのです。さらに、全農家数のうちの米農家の割合は7割を占めます。この額の大きさ、税の高さ、数の多さからいって、米産業が最も深刻なダメージを受けることは明確です。

今、手を打たなければ、まず初めに必ず米産業が大きな打撃を受けることになります。そして米産業が倒れれば、日本農業全体が壊滅的な状況になります。本弁論では最も急務として手を打たなければならない米産業に的を絞って、貿易自由化の波に耐えうる強い産業をつくるための抜本的な農業改革を提案いたします。

具体的に、貿易自由化の波にのまれない、強い産業とは「国際的な市場競争の場で勝てる、質がよく、コストパフォーマンスのよい米」を生産できる産業であります。
そして、海外から入ってくる安い農産物に戦々恐々とする守りの農業から、海外に売っていく攻めの農業へと転換するのです。

【問題点】
それではどうすれば、攻めの農業が実現できるのでしょうか。
そこには現状2点の問題が存在します。
一点目は、日本のお米の価格が高すぎること。
二点目は、輸出する個人や法人がごくわずかで小規模であること です。

まず、一点目の「日本のお米の価格が高いこと」ですが、現在国内で流通されている米の価格は60キロあたり、約1万3000円で、これは現在日本米を輸出している台湾・シンガポール・香港の現地の価格に比べて、約3倍もの価格差が生じています。実際、海外で取り扱われている日本のお米は高級スーパーや高級日本料理店でしかお目にかかれない代物であり、一般には流通していないという現状があります。
また、日本米の輸出に失敗した個人、法人に、その理由を聞くと、理由の8割が日本の価格が高すぎて海外市場に受け入れられなかったという理由で、価格が相当なナックになっているのです。

二点目の「輸出する個人や法人がごくわずかで、しかも小規模である」ことについてですが、現在輸出経験のある個人や法人は外食産業とすでに取引経験のある法人や、大学と連携することでブランド化が図れた商店など、運よく提携の機会を得たごくごく一部の個人や法人に限られています。

【原因】
では、なぜこのような問題が発生しているのでしょうか。
その原因は2点あります。
一点目は減反政策
二点目は輸出を推進するサポート体制が不十分であること です。

まず、一点目の減反政策についてですが、これは米の生産を減らすように促す政策のことです。たとえば、作付面積を減らした農家に減収分の8割を補助する、もしくは水田を米以外の作物に転作した場合に1アールあたり5万円の補助金を出すというものです。要するに、「米の生産を減らした人には、国が補助金を出しますよ」というものです。この政策はもともと、国内の需要が落ち込んだことで、供給が過剰になってしまったので、需給を一致させるために打ち出されたのですが、結果として小規模な農家が増え、高いコストでお米が作られる環境を生み出したのです。さらに、補助金が市場価格に上乗せされる形でお米が売られたので、高価格に拍車がかかった状況となりました。

次に、二点目の輸出を推進するサポート体制が不十分であることについてですが、お米を輸出しようと考える個人や法人に、現在国が提供しているのは、商品をアピールする場を提供するのみとなっています。しかしながら、米の輸出をする際には運搬を担う輸出入業者から。海外での販売先となる小売店や飲食店に至るまでをすべて自力で手配しなければなりません。さらに、専門的なマーケティング知識に基づいた戦略をたてて、海外でも通用する商品を売り込んでいく力が必要になります。これまで。作ったお米を農協などに提供するだけで、生産にしか関与していない一般農家がこのようなマーケティングを行えるはずがありません。

【解決策】
そこで、日本の米の輸出量を増やすために、3点、解決策を提案いたします。
一点目、減反政策の廃止
二点目、大規模農家への直接支払い制度の導入
三点目、日本米輸出対策機構という名の独立行政法人の設立 です。

まず、一点目の減反政策の廃止についてですが、この政策によって、農地がこれ以上小規模になることを防ぎ、さらに市場価格に上乗せされた補助金をなくすことで、価格を下げることができます。

次に、二点目の主業農家への直接支払い制度の導入ですが、これは現行の戸別補償所得制度と異なり、上の農家を指します。なぜ、20ヘクタール以上なのかというと、今年の10月に政府が出した国際競争力強化に向けた基本方針に20ヘクタール以上の農地に大規模化することが目標数値として掲げられているためです。このように理想とする大規模農家を育成するためには、対象を制限することで、農地集約の意欲を向上させ、大規模化を図ることができます。さらに懸念される市場価格の下落を直接支払いという形で政府が直接リスクを負担することで、安定した経営に着手することができます。

最後に三点目の、日本米輸出対策機構という名の設立についてですが、これは日本米を輸出しようと考える個人や法人に対して、運送業者から小売業者まで、個別具体的に適切な業者を紹介したり、専門員による輸出先の的確なマーケティング調査による情報を農家に明示したりすることで、マーケティングの専門知識の少ない人でも、販路の確保を容易に行えるように全面的に支援していくものです。

以上の政策で、農地を集約し大規模化を図って、コストの低下を実現させ、補助金上乗せ型の市場価格から、政府の直接支払いによって、市場価格をさらに低下させ、価格面で他国と渡りあっていけるようになります。そして、専門員による強力なバックアップによって、米の輸出を格段に増やすことができます。

【展望】
日本のお米は世界から高い評価を得ています。高品質、安心でおいしいという評判に、国家戦略的に輸出を促進していく体制が整えば、確実に日本のお米を世界に売り出していくことが可能となるのです。
押し寄せる貿易自由化の波ののまれてはいけません。日本の農業はこの波を受け身にとらえるのではなく、攻めの姿勢で立ち向かうときが来たのです。
今こそ、世界に通用する強い、新しい日本農業の実現に向けて、抜本的な農業改革をしていきましょう。

ご清聴ありがとうございました。




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