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演題 「ドリンカーズ・オブ・ジャパン 呪われた酒飲みたち」

弁士 和田祐樹(理1)

「かんぱーい!!」

日本全国では、昔から毎晩宴が催されています。社会人も学生もお酒の場で労をねぎらって、仲間と親睦を深めてきました。お酒の場を通じて他人と理解しあえた、白熱した議論ができた。お酒は人々に有意義で楽しいひと時を与えてくれるものです。
大学生でも9割が月1度以上飲酒をしており、社会人は平均で月に1.5回飲み会に参加しています。これだけお酒は私たちの身近にあるものです。飲み会は、ほとんどの人が参加したり、1度は経験するものです。

しかし今、困ったことにそのお酒によって大変な問題を引き起こしている人たちがいます。
それが呪われた酒飲み、アルハラをする者です。
アルコールハラスメントとは簡単に言えば、
拒否している者に対して飲酒の強要をしたり、酔っぱらって暴力を振るったりすることです。
今3040万人の人々がお酒の場で暴言、暴力、からまれる、飲酒強要、セクハラによる被害を受けています。
このうち後の生活に悪影響が出たという人は1400万人います。これは近年、厚労省の調査で分かったことです。
アルハラによって1400万人の人は例えば後の生活にどのような影響を受けているのでしょうか?

社会人2年目の男性の例
体質的に飲めないため上司からの一気飲みを強要されて断ったときは、説教され、本気で蹴られる、平手打ちで殴られることがある。
職場を変えたいと考えているが、できそうにない。

某音楽大学の新入生の例
新歓の飲み会で、三回も吐かされました。
数限りなく理不尽な飲みを強要され、同級生のほとんどが吐くか歩けなくなるかの酷い状態にさせられてしまいました。
このような飲み会が強制参加で行われています。
音楽に対する向上心は飲み会で吐いた物とともに流れていったと言っても過言ではありません。

他には、飲酒の強要によって急性腸炎になった。肝機能障害に陥った。3年留年した。など、問題を発生させています
政府は対策をまだ打っていません。
市民団体のASKもポスター掲示、チラシ配布はしたが、効果を得られている実感がないということです。
私自身大学に入学してから、一気飲みさせられることがありました。実際に嫌がっている人がいることも知っています。私はアルハラを行って楽しんでいるのは本当の楽しさではないと考えます。先輩や上司を相手にしても、言いたいことが言い合える、深いコミュニケーションができる、それが飲み会の場であるべきと私は考えます。それが私の理想社会における理想の飲み会です。本来飲み会から恩恵を受けるべきであるはずなのに、逆にその飲み会によって被害を受けているのです。私はその理不尽さに怒りを覚えています。
今現在、私の理想を妨げる最大の障害はアルハラです。3040万人が受けているアルハラがある限り、飲み会において本音で語り合うことなどできません。それどころか飲み会で被害を受けています。


【原因】
では、アルハラを生じさせる原因は何でしょうか?
その原因は、アルハラを受けているものの方がアルハラをしているものより力関係で下であることです。
アルコール市民団体であるASKの調査によると、加害者の7割は先輩、上司で占められているといいます。さらに被害の7割は複数名によって行われます。
このことはイジメの生物学研究からも明らかなことで、順位制型イジメ、醜いアヒルの子型イジメの2大イジメにみられる現象です。順位制型は上下の支配関係によって、醜いアヒルの子型は酒を飲めないもの、すなわち少数派の自分たちとは異なる人間に対して働くのです。
アンケートなど調査は行われていませんが、このことは被害事例にほとんど共通して見られるものです。
アルハラは力関係の差によって生まれます。
この力関係により、立場的に下にいるものの多くがひどい苦痛やストレスを被る、アルハラの被害にあっています。

【政策】
これを解決するために、私は2点の政策を打ちます。
1点目、飲酒強要罪の制定。
2点目、企業、大学等におけるアルハラガイドライン制定、アルハラ講習会の義務化。

まず1点目の飲酒強要罪の制定は、飲酒の場における力関係の差を埋める目的で行うものです。
確かに概存の法律に強要罪がありますが、これは飲酒を無理矢理勧められたことだけでなく、「本人が実際に飲まされた事実」が犯罪成立の条件となります。つまり飲ませている映像や健康被害が出たことが証拠として必要になります。そのため、裁判で飲酒強要の事実が証明されることは稀です。
そこで飲酒強要罪が必要になります。この犯罪は体質上酒が飲めないこと、未成年であることなど正当な理由で拒否しているのにもかかわらず、複数回にわたり飲酒を強要したものが罰せられる罪です。この犯罪を犯した者は3年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処されます。
原因で挙げた飲み会における力関係はこの飲酒強要罪という法律の下では平等になります。被害者が実際に飲酒したという事実がなくても、加害者が飲酒を無理矢理勧めさえすれば犯罪になります。つまりこの法律があれば、ICレコーダーで飲酒を強要される様子を録音した物や第3者の証言さえ得られれば、飲酒を強要したものは罰せられるのです。この法律は強要罪より適用されやすく、飲酒を強要された場合、この法律の存在を主張することによって、力関係を均衡させます。
例えば、体質上酒が飲めないこと、未成年であることなど正当な理由で拒否しているのにもかかわらず、複数回にわたり飲酒を強要したものは、その録音音声などが証拠となり飲酒強要罪が適用されます。
この飲酒強要罪は、飲酒強要への抑止力として働き、これによって弱きものは法の盾により守られるわけです。

次に2点目の企業、大学等におけるアルハラガイドライン制定、アルハラ講習会の義務化はアルハラによる冤罪を防ぐという目的で行うものです。
飲酒強要罪によって裁かれるのは、明確な理由をもって飲酒強要を拒否したのにもかかわらず複数回にわたり再度強要をしたものです。
飲酒強要罪が適用されるこの基準を企業や大学でガイドライン、講習を通して明確に理解してもらいます。
加害者となりうる人がそのような認識を持てば、自らの行動を飲酒の強要をしないように抑えて、自らが犯罪を犯す事態を防ぐことが出来ます。これによってますます飲酒の強要はなくなります。

これらの政策をセットで打つことで、飲酒を強要する、呪われた酒飲みたちはいなくなり、アルハラのない飲み会となり、その先に私の理想社会、先輩や上司を相手にしても、言いたいことが言い合える、深いコミュニケーションができる飲み会が開かれる社会が実現されます。

みなさん、これは我々の問題です。我々のすぐ身近に潜むこの問題に、すぐにでも手を打たねばなりません。
これから開かれる飲み会が楽しい場であることを願って本弁論を終了いたします。ご清聴ありがとうございました。


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