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演題 「雲に光を与えるもの」

弁士 峯森 徹 (政1)

【導入】
水素爆発、メルトダウン。
恐ろしい言葉が飛び交った福島原発事故。
津波で全電源が喪失。
緊急冷却装置が動かず、あの未曾有の大事故が起こったのです。

しかし、最新型の原発ではこの問題は起こらないことを皆さんはご存知でしょうか。
電気不要の冷却装置の導入で電源を失っても72時間の冷却が可能となっているのです。
その最新型原発を今、多くの新興国が求めています。
そしてその最新型原発を我らが日本も製造しています。
40年以上に渡る開発努力で、日本は世界有数の原発技術国になったのです。
私はこうして日本が長い努力の上に培った誇るべき原発技術を活かしたい。
その技術を大好きな日本の為に使いたい。

近年盛り上がりを見せる原発輸出市場。
それは大きな国益を生むものです。
日本がこれに取り組まない手はありません。
今こそ、これまで40年の開発努力の成果を活かす時なのです。

【重要性】
原発輸出は大きく3つの国益をもたらします。

1に資源確保。
2に経済効果。
3に技術発展。
の3点です。

1点目の資源確保。
原発を求める新興国はレアアースや鉱物、原油やウランなど多くの資源を持っています。
原発輸出はお金を出すだけ、道路や橋を建てるだけのODAやインフラ協力といった資源確保手段とは異なります。
運営経験を持たない新興国の代わりに運営を行うことで建設から廃炉まで長期的な関係を築けます。
また原発輸出は、高度な技術を必要とするので、出来る国は限られています。
主なライバル国はフランス、ロシア、韓国の3カ国のみです。
そして何より、急激な人口増加、経済成長で電力需要が膨れ上がっている新興国の強い需要があります。
その有効性の高さは、韓国がアラブでの受注で大規模油田採掘権を手に入れたこと。
日本がベトナムでの受注でレアアースの開発合意を取り付けたことで立証されています。

2点目の経済効果。
原発は1基でなんと5000億円もの事業規模になる上に、2010年時点で18カ国、72基もの建設計画があります。
福島事故後に計画中止したのが僅か2カ国。
その穴も、今年6月、サウジアラビアの16基もの大建設計画発表であっさり埋まりました。
その市場規模は経産省試算で2020年に年間16兆円。
これは同じインフラ輸出である高速鉄道の10倍に当たるものなのです。

3点目の技術発展。
日本が高い原発技術を保てたのは国内での建設を続けてきたからです。
しかし、国内の電力需要には限界があること、また世論の問題もあって新規建設は困難です。
だからこそ、原発事業、技術を保ち、更なる発展に繋げるため原発輸出は必要です。
そこで得た技術発展は、国内原発の安全性向上や廃炉を行う際にも役に立つものとなるのです。

【現状】
これらの3つの国益をもたらす原発輸出。
さらに原子炉メーカーを3社抱える日本には十分な勝機があります。
なぜなら、他国と異なり沸騰水型、加圧水型の二種類の原発を提供できるという強みがある為です。
実際、昨年の成功は目覚ましいものがありました。
体制強化を図り、官民合同の新会社「国際原子力開発」を設立。
その甲斐あって、昨年10月にはベトナムで2基の受注獲得。
更に昨年末にはトルコとの優先交渉権も獲得。
成功に継ぐ成功、日本の原発輸出の未来は明るいものに思えました。

【問題点】
しかし、今年3月の福島の事故以降、日本の原発輸出の行く手を阻む問題が2つ発生しました。

1点目、トルコによる優先交渉権打ち切り
2点目、沸騰水型原子炉の輸出困難化
の2点です。

1点目のトルコの優先交渉権打ち切りについて。
これは菅前首相の「輸出見直し」発言によるものです。
輸出の実効性に危機感を持ち、トルコは7月末での交渉権打ち切りを発表しました。
幸い、経産、外務大臣が火消しに回り、交渉権の当面維持は出来ました。
しかしトルコは10月中の決断を求めており、予断は許されません。
また、野田政権に於いても、首相による新規輸出の否定発言に対し経産大臣の輸出の継続発言など明確な統一方針がとられておらず、改善は望めません。

2点目の沸騰水型の輸出困難化について。
海外輸出の際、沸騰水型の運営を担うことになっていた東京電力。
その東電が7月に原発輸出からの撤退を表明してしまいました。
原発輸出にはもう加圧水型を担当する関西電力しか残されていません。
そのことで折角の沸騰水型の輸出が困難になってしまったのです。
これでは、2種類の原発を提供できるという日本の強みが失われてしまいます。

【原因】
日本の原発輸出の前に立ちはだかったこれらの問題。
その原因は2点挙げられます。

1点目、方針の発信源が2つあること
2点目、東京電力の経営が悪化したこと
の2点です。

1点目の方針の発信源が2つあることについて。
これは原発輸出に関し、国のトップである首相と国のインフラ輸出を仕切る関係大臣の2つの方針 発信源があることです。
原発輸出の方針は官房長官が議長を務める「パッケージ型インフラ海外展開大臣会合」に於いて決められます。
通常、官邸会議の議長は首相が務めるものです。
しかし、この会合は首相が議長を務める「新成長戦略実現会議」の下に属しているので、議長は官房長官となっているのです。
このように国のトップと原発輸出を決める会合のトップ、2つの方針発信源があることで国の方針が明確になりません。
そのことで新興国が不安を抱き、受注争いにおいて大きなマイナスイメージを生むことになるのです。?

2点目の東電の経営悪化について。
福島事故後、賠償に追われることとなった東京電力。
その賠償金額は4兆5000億円にも登るとされています。
支払いの元手を確保できず、政府に泣きつき7000億円の支援を求めているのが今の東電の現状なのです。
逼迫した経営状況。
今の東電に輸出を行う余裕は残されていないのです。

【政策】
これらの原因を解決するため私は2点の政策を提案します。

1点、首相を含む「原発輸出に関係する大臣会合」の開催
2点、輸出のための電力4社合同事業体の設立
の2点です。

1点目の首相を含む「原発輸出に関係する大臣会合」の開催について。
これは2つの方針 発信源を統一する目的で開催するものです。
現在のインフラ輸出会合は、他の会合の傘下にあるため首相が参加していません。
そこで、原発輸出に関する会合を独立させ、首相と官房長官、経産大臣、外務大臣による会合にするのです。
このことで、首相と関係大臣が皆会合に出席するため、方針を統一することが出来ます。
国としての明確な方針を示すことが出来るのです。
首相と関係大臣の発言がずれることは無くなります。
この事で相手国からの信頼を得、受注を手に入れることが出来るのです。

2点目の電力4社合同事業体設立について。
これは沸騰水型原子炉を東京電力の代わりに輸出する目的で行う政策です。
国内で沸騰水型を運転しているのは東電以外に東北電力、中部電力、北陸電力、中国電力があります。
この4社が共同で出資し輸出時の運営を担う新しい会社を設立します。
1社単体では東電の規模に及ばないため、4社合同とすることで外に出ていくための力を持たせます。
このことで、2種類の原発を提供できるという強みを復活させることが出来、受注競争で優位に立つことが出来るのです。

【展望】
以上2点の政策によって、方針統一による官民一体の「官」の部分の強化。沸騰水型の輸出可能化による「民」の部分の強化。を図り、官民一体の原発輸出体制の強化が実現されます。
そしてその強化により、原発輸出を積極的に進めることで3つの大きな国益を日本にもたらすことができるのです。
資源国に振り回されることは無くなり、1基に付き5000億もの利益が入ってきます。
その利益は勝てば勝つほど大きくなります。
そして、原発技術の発展により、国内原発の安全性向上にも繋がります。
この素晴らしいチャンスを逃して良いわけがない。
40年かけて育てた原発技術という木の、実を取る時は今。
日本は一刻も早く体制の強化を図り、原発輸出に邁進すべきなのです。

今年3月の東日本大震災、福島原発事故。
日本は今、暗い雲の中にいます。
その雲を裂き、日本に光を与えるもの。
それが、原発輸出なのです。
ご清聴ありがとうございました。



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