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演題 「安らぎのあさ」

弁士 飯倉一樹 (政1)

【導入】
「いやだ、つらい、早く楽にしてくれ!」

あなたは、自分の目の前で、重い病に苦しむ人を見たことがありますか。
苦痛のあまり、会話も満足にできず、食事を取ることもままならない。
朝目覚めても、苦しみの絶えない日常が待っている。
そんな苦しみに満ちたつらい朝を迎えている人たちを見た事がありますか!?

【現状】
現在、日本国内では、こうした、がん患者が全国に大勢います。
この患者たちは、病の激しい痛みを抑えるために、鎮痛剤を使っています。この鎮痛剤は、病の痛みをなくし、患者の苦しみを減らすことができるのです。鎮痛剤なしには、闘病生活を続けることはできないのです。
現在、この鎮痛剤の主流となっているのがモルヒネです。このモルヒネ使用者は全国で100万人、存在しています。
しかし、このモルヒネは、痛みを消す代償として、激しい嘔吐、慢性的な便秘など、つらい副作用が伴います。このモルヒネによる治療を続けていると、やがては中毒になり、植物状態になってしまうというリスクも負います。
しかも、全国の1/3の患者に対しては、その効果すら現れず、激しい病の痛みと闘わなければならないのです。

製薬会社が国内のがん患者3万人に行った調査によると、その8割もの人が「現状の鎮痛剤の効果に不満を持っている」という結果が出ました。このことから、モルヒネ使用患者は、モルヒネに対して不満を抱きつつも、現在もモルヒネによる治療を行わざるを得ない状況に置かれています。

【重要性】
しかし、こうした不満をなくし、苦しみが少なく治療を続けられる方法があるのです。

それが「医療大麻」であります!

医療大麻とは、医療用に用いられる大麻のことです。

この医療大麻は、3つの大きなメリットが存在します。
1点目、副作用が少なく患者への負担が小さい
2点目、様々な方法で処方できる
3点目、依存度が低い
の3点です。

1点目の「副作用が少なく患者への負担が小さい」ということについて説明します。
医療大麻は、激しい嘔吐、慢性的な便秘などの副作用を伴うモルヒネに対して、口の渇き、目の充血などの些細な影響が出る程度です。
モルヒネと同じ鎮痛効果がある医療大麻は、副作用が少なく、患者の負担を少なくすることができるのです。これは、カナダの保健省も認めています。

2点目の「様々な方法で処方できる」ということについて説明します。
鎮痛剤として主流となっているモルヒネは、注射、錠剤による投与が一般的です。
しかし、患者によっては注射ができなかったり、錠剤を飲み込むことができなかったりするケースがあり、必ずしも処方できるわけではありません。
それに対して大麻は、スプレー、蒸気吸引、食品加工して処方するなど、幅広い活用法があり、患者の多様なニーズに答えることができます。より柔軟な処方が可能です。

3点目「依存度が低い」ということについて説明します。
全米科学アカデミー医学研究所の調査によれば、使用人口のうち、依存症に陥ってしまう人の割合は、モルヒネが23%なのに対して、医療大麻はなんと9%。
モルヒネに比べて、はるかに依存度が低いことが分かります。
これほど有用性の高い医療大麻。アメリカでは300もの医療機関が医療大麻に関して効用を認め、推進の立場をとっており、既にカルフォルニア、ハワイを始めとする14の州で医療大麻の使用が認められています。
他にもカナダ、スペイン、ドイツでも、医療大麻の有用性が認められ、医療現場に導入されています。

しかし日本では、医療大麻によってより負担の少ない治療ができるというのにもかかわらず医療大麻導入は阻まれているのです。

【問題点】
では導入を阻む問題はなんなのでしょうか?
その問題とは「大麻取締法」の存在です。大麻取締法とは、其の名のとおり、大麻を取り締まっている法律です。
その4条は大麻から製造された医薬品を処方すること、また処方されることを禁じています。
その上、大麻の人体に対する臨床試験を行うことを禁じており、行政も医療大麻使用に関する研究・会議等も一切行っておらず、一向に導入の兆しが見えません。
この法律が存在するため、どんなに大麻による有用性があっても、日本では医療大麻が導入できていないのです。
そのため、今の医療現場は、モルヒネによって多くの患者が副作用に苦しみ、過酷な闘病生活を余儀なくされています。それだけでなく、モルヒネの効果が出ない1/3の患者は、元々の病の痛みに苦しみ続けなければならないのです。

【原因】
ではこの法律が存在し、医療大麻導入を阻んでいる原因とは何でしょうか?
その原因とは「悪用の恐れがあること」です。
「悪用の恐れがあること」は、治療目的以外で嗜好品として使用される恐れがあるということです。
そのことで、他の薬物の入口になる「ゲートウェイドラッグ」になってしまい、人体に悪影響を及ぼすことが懸念されています。
この保健上の懸念が、医療大麻を導入できない原因となっています。
実際、厚生労働省の大麻専門の部署、大麻取締局の見解では
「医療用だとしても大麻は悪用される懸念があり、国内での導入はしがたい」と言っています。国は悪用を懸念しているのです。

【政策】
ここでこの原因を解決し、日本国内において安心して医療大麻がつかえるようにする政策を二点、提案します。
それは
一点目、段階的な医療大麻の導入
二点目、悪用防止の管理体制の確立
の二点です。

まず一点目の「段階的な医療大麻の導入」について説明します。
導入を阻んでいる大麻取締法改正のためには医療大麻が適切な管理がなされており、悪用の心配がないということを示さなければなりません。
管理体制が整い、安全に生産・使用できる状況になれば法は改正され、臨床試験、医療目的での使用ができるようになります。
その後は、大学病院や、特定機能病院といった大規模病院から使用を始め、準に普通の病院、診療所での使用まで段階的に許可していきます。
そのことで試験的な運用をしつつ、安全性を保ってゆくのです。

二点目の「悪用防止の管理体制の確立」について説明します。
これは、懸念されている「医療大麻の悪用」を防ぐため、「生産現場」と「使用方法」に制限をかけることです。

「生産現場の制限」は、栽培地の周囲に二重の金網を張り巡らせ、出入口には施錠することを義務付けて第三者の手にわたらないようにします。
そして栽培地、管理状況、生産量を厚労省に届け出て認可された農家を指定します。
認可された後は監視員による定期的な査察の受け入れ、生産量の提出を義務付けます

「使用方法の制限」は、医療大麻をスプレーや蒸気吸入、食品加工した状態で患者に渡す方式にするのです。
海外では葉っぱや種で患者に渡していたため、そこから過度な摂取といった悪用につながってしまいました。
この方法ならば、用法用量がはっきりしているため、患者が正しく使えるようになるのです。

以上のように生産現場と使用方法を管理・制限することで、医療大麻の悪用を防ぐ事が出来るのです。
この政策によって、悪用のリスクがなくなるため、大麻取締法が改正されるようになります。
よって、医療大麻が導入できるようになるのです。

【展望】
すべての物事には正と負、二つの側面が存在します。
その負の側面にとらわれすぎて正の側面を活かせないのはあまりにももったいないことです。

私の親戚に、癌になり、モルヒネで苦しんでいた人がいました。
その人に何もできず、ただ傍観することしかできない自分が悔しかった。
悲しかった。
少しでもその苦しみを取り除いてあげたかった。
一日でも早く、医療大麻が導入され、一人でも多くの患者が苦しみのないやすらぎの朝を迎えられることを願って、本弁論を終了させていただきます。
御清聴ありがとうございました。


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