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演題 「貧困の克服」

弁士 森谷司 (農2)

【導入】
皆さんは、3秒に一人の割合で人が死にゆく世界の存在を 御存じだろうか?
アフリカ大陸には世界の貧困の6割が集中し、そして一日1.25ドルで暮らす飢餓状態の人が国全体の4割にも及び、そういった貧困層の推移がなんと20年前からほとんど変わることがないのである!
豊かな国の人々のみが笑い、貧しい国の人々が泣いている世界は正しいのだろうか?
いや、間違っている!

私の理想は、このアフリカにおける貧困を根絶し、全ての人が笑っていられる世界を実現することにある!

【現状】
現在、日本では、こうした貧困で苦しむ人を救うために、ODAという形で、「開発途上国」と定義される国に対して援助がおこなわれている。2011年度の予算では約5000億円がODAの予算として組まれている。この額は1997年に最高値を記録して以来ずっと、ほぼ横ばいで推移している。その一方で、OECD加盟国は、軒並みODAの額を増加させている。
たしかに、このODAの額が、OECD加盟各国中で増加傾向にある中、日本が減少傾向にあることは疑問を抱かずにはいられない。
しかし、日本のODAの根本的問題は、ODAの額よりも、その内容にあるのである。

【問題点】
その内容の問題は、以下の2点に集約される!
1点目、日本のODAは、アジア地域に偏在していること。
2点目、ODAが、貧困国で暮らす、末端の人々に行きわたっていないこと。
以上2点が、ODAをめぐる大きな問題点である。

それではまず1点目の問題である、ODAがアジア地域に偏在している問題について説明したい。
日本の2008年のODAの地域別割当額は、アジア・オセアニアに占める割合が、全体の約5割という大きな値をしめしている。その一方で、中東や北アフリカ、サブサハラアフリカに占める割合は1割にも満たない、わずかなものとなっている。
貧困人口の60パーセントが暮らし、1日1.25ドル未満で生活する人々の割合が41パーセントと世界で最も多いアフリカに、ODA配分が極めて少ない!

ではこの偏在の原因はなんだろうか?この原因とは、日本のODAが「国益実現のための戦略的ツール」と化してしまっていることにある。
2007年、自民党や経団連の外交関連提言によってなされたこのODAに対する認識がODAの根本となしている。このせいでODAは、主にアジア地域という比較的インフラが整い、投資に対するリターンが見込まれるアジアを中心に配分されてしまうのである。

次に2点目の、ODAが現地の末端の人々に対して、行き渡っていないという問題について説明する。
これは、つまり、ODAの支援先の国におけるバッドガバナンスが原因で、支援が本当に必要な死と隣り合わせの現地の人々に使われるお金の多くが、無駄になっていることである。
ここでいうバッドガバナンスとは、政治腐敗のことで、ODAの支援金が賄賂に使われてしまっていることである。
世界銀行の推計によると、その額は、アフリカだけで年間1兆ドルにのぼる。
これは世界のGDPの3パーセント近くに相当する金額であり、経済成長や、世界の収入に及ぼす影響を考えると、甚大な数値である。
そしてこの腐敗はいつ発生するのかというと、その多くは公共政策の実施時に発生する。
公共政策とは、主にインフラ分野において、政府が少数の事業団体や政治家のために便宜を図る「縁故資本主義」によっておこり、そのため国全体の経済の健全性が犠牲になることである。
その結果、不必要で効率の悪い公共インフラ投資が増える一方で、政府にとっての短期的利益に結びつきにくい、命を守るための教育・健康などといった、住民一人一人に向けられる公共福祉への資金の流れが抑えられてしまうのである。

以上をまとめると、
1点目の問題は、国益主義が原因で、ODAのアジア偏在が起こること。
そして2点目の問題は、バッドガバナンスが原因で、現地民へ効果的な支援がいきわたらないことである。
この2点が、貧困を克服するという観点から、効果的なODAを行うことができていない問題と原因である。

【政策】
以上を踏まえ、この、1点目のODAの地域的偏在と、2点目のバットガバナンスがもたらす不利益を改善するために、私は2点の政策を提案したい!

1点目は、ODAの支援の柱を、アフリカにシフトすること。
2点目は、ODAを受ける地元住人による、政府監視制度の導入である。

それでは、1点目の政策である、ODAの支援の柱を、アフリカにシフトすることについて説明する。
これは現在の、アジア向けに行われている「国益重視」を前面に出したODA戦略から世界の貧困人口の約6割が暮らすアフリカにODAを優先的に配分する、「人道的支援」へと日本のODA戦略を転換することだ。
つまり、投資によるお金のリターンや相手国との関係強化を主目的に据えた、経済的利益よりも、人命を救うことを最優先させるODA戦略へ移行させるのである。
内閣府の日本国民に対するODAに対する意識調査では、「日本の国益を望む」と答えた人が10パーセントであるのに対して、「人道的に途上国の人を助けることを望む」と答えた人が50パーセント以上にのぼるのである。この事が、国益重視のODAから、人道的支援を重視するODAへ移行させるための裏付けである。
つまり現行の一部の財界の思惑や利権が反映された国益重視の政策は、多くの国民の理解から反しており、人道主義観点のODAへの移行は十分可能なのである。

次に2点目の、ODAの供給先の地元住民による政府監視制度について説明する。
この政策は、日本政府が、現地で活動するNGOを利用し、日本からのODA内容を広報することにより、地元の行政機関が適切な支援を行っているのかを地元住民に監視させる制度である。
実際に、このような制度を実施したウガンダでは、政府支出1ドルにつき、救う対象としていた小学校に届く額は20セントから、80セントまで増加した。
現地の人たちが、自分たちに配分される資金を知ることが出来るように広報活動を増やし、監視を強化する改革によって、バッドガバナンスによるODAのロス分を減らすことができるのである。
このバッドガバナンス改善は、貧困の減少と密接な相関関係を示している。
世界銀行が示すバッドガバナンス抑制指数によると、バットガバナンス指数が1ポイント改善されれば、貧困は4パーセント改善される事が証明されている。
これを日本に当てはめると、支援される国のバットガバナンス改善により、日本のODAだけで、途上国の貧困者を年間約1500万人も救うことができるのである!
以上が、地元住民による監視制度導入により、貧困者数を救うための政策である。

この2点の政策導入により、日本が国益主義によるODAを脱却し、地元住民が最大限の恩恵を受けられるODAとなるのである!

【展望】
3秒に1人が貧困によって死ぬ世界。この弁論を行っている間にも、世界では○○人の人々が餓えて死んだ!
富める国の者だけが笑っていて、貧しい国の人々が泣いている世界が果たして正しいのだろうか?いや、正しいはずがない!

貧困による苦しみと悲しみから抜け出し、笑顔に満ち溢れた、素晴らしい世界が実現することを強く願う。
ご静聴ありがとうございました。


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