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演題 「ともに歩む」

弁士 倉林正弥 (法1)
【導入】
人は独りでは生きていけない。

辛い時、苦しい時。
互いに支え合って生きる手段。それが、「結婚」です。

我々は「結婚」をすることで、多くのものを得る事ができます。

「結婚のメリット」を聞いたアンケート調査では、人は結婚することで多くの幸せを得られていることがわかります。その一例が、「精神的な安らぎの場が得られる」「子供や家族をもてる」「愛情を感じている人と暮らせる」などです。
この利点は自殺率にも現れており、10万人あたりの自殺者数は、配偶者を持つ男性が38.8人であるのに対し、未婚男性は92.8人。
女性も同様の傾向にあり、日本国民の未婚自殺者は既婚自殺者の2倍以上となっています。

また、国にとっては、結婚する人が増える事で副次的に、「少子化の改善」、「福祉費用の削減」という利益を得る事ができます。
このように、結婚は男女にとって、得られることの多い「良い事」であり、また国も、男女が結婚をすることで、利益を得る事ができるのです。

【現状分析】
そして、価値観が多様化した現在においても、結婚は良い事であるととらえられており、
独身者が「結婚を望む」割合は、男女ともに9割前後で推移しています。

しかしながら、現在、25〜30歳の未婚者割合は男女ともに年々増加しています。男性では、2005年には71.4%、女性では59%へと、30年前に比べ30〜40%も上昇しているのです。

また、かつて1%台で推移していた生涯未婚者の割合も、現在では10%を超えるほどです。
9割の独身者が結婚をしたいにもかかわらず、今、多くの人は結婚できないでいるのです。

こんなことがあっていいはずが無い!
多くの人が望む事が、達成されることなく放置されている、このような社会がはたして正常と言えるでしょうか?いいえ、そんなはずありません!

私は、結婚をのぞむ人誰もが結婚できる社会、そんな社会を実現させることを本弁論の目的とします。

【問題点】
それでは結婚を阻む問題とはいったいなんでしょうか?

25歳以上の独身者に対する、「現在独身にとどまる理由」を尋ねたアンケートによれば、男女ともにトップであったのが「適切な相手に巡り合わない」結婚の前提段階の「出会い」。次点が結婚段階の「結婚資金」という結果でした。

すなわち、出会いから結婚、出産、また育児の中で、出会いの段階と結婚の段階に問題点があるのです。


【原因分析-出会い段階】

それではまず、「出会い」の段階について、なぜ問題が生じているのか、原因分析を進めたいと思います。

かつて未婚率が低かった日本では、「見合い結婚」が一般的でした。見合い結婚は、価値観や立場のミスマッチが生じにくく、男女の生涯未婚率はなんと2%以下でした。

ところが、1970年代、地域の結びつきが弱くなったことによる人間関係の希薄化した事。結婚というプライベートなものについて立ち入り相手を工面してくれる人が減少した事により、見合い結婚の割合は減少しました。

そして、見合い結婚が少なくなってきた結果割合を増したのが、「恋愛結婚」です。

恋愛結婚の割合は、見合い結婚割合の減少とともに急激に増加し、現在では結婚割合の約9割が「恋愛結婚」となっています。
しかしながらこれは、相手の事を知るためにある程度の期間、また労力が必要となり、出会いから交際までに行きつくことが難しくなりました。
そしてさらに、その恋愛結婚市場にも変化が訪れたことも、未婚率を上げた要因のひとつです。
恋愛結婚割合が増加し始めたころ、男女の出会いの場所のトップは「職場や仕事の場」でした。ところが2000年代、職場での出会いは減少してしまいます。

近年、景気の悪化による就労形態の変更、終身雇用制の崩壊などにより、相手の事を知るための期間、機会が減少したため、職場が出会いの場として機能しなくなったと考えられます。
そして現在も、職場に変わる出会いの場は出現していません。

以上、出会いについての問題点は、見合い結婚、そして恋愛市場開放後の職場、のような、男女を引き合わせる場所が社会によって準備されなくなった事で、出会う機会、そして相手の事を知るための十分な期間が与えられなくなったことが問題なのです。


【原因分析-結婚段階】

次に、結婚資金についての問題を分析します。

結婚資金とは、結婚する際にかかる諸費用のことであり、具体的には、結婚式を挙行する際にかかる経費、新生活を始めるにあたっての、家財の購入、などがあげられます。
この結婚資金は、平均で数百万かかるとされており、たとえ夫婦二人が、自分たちが暮らすには余裕があるほどの収入を得ていたとしても、結婚資金が貯蓄できるまで結婚を躊躇する、と考えられます。

事実、前述の通り、独身男女の約20%が「結婚資金がたりない」と回答しています。
つまり、結婚できない理由として、数百万の結婚資金を準備することについての負担があげられるのです。


以上、問題点を総括すると、まず、出会いに問題があることで、男女が交際まで行きつけない。そして、結婚資金の問題があることで、男女が交際から結婚へ行きつけない。こうして、未婚者が増えていくのです。

そう、このような問題があることで、未婚者は未婚者であらざるを得ないのです。

決して個人や、価値観の変化に問題があるわけではありません。結婚に至るまでの整備がなされていないのです!つまり、結婚に至るまでの道を整備し、結婚したい人が結婚できるような社会にせねばなりません!


【解決策】
そこで、そんな社会を実現するための政策を、私は2点提示したいと思います!

1点目、国営結婚支援センターの設立
2点目、結婚支援貸付金制度の導入

1点目の、国営結婚支援センターとは、出会いから結婚に至るまでの支援をする国家機関です。具体的には、結婚相談サービスの提供、地方自治体と協力した、お見合い、婚活パーティーのセッティング、民間結婚相談所の評価、認証業務、結婚支援政策の窓口業務などを行います。これにより、出会う段階の問題を解決します。

現在、行政で行われている結婚支援策として、地方自治体で行われるお見合いがあります。例えば、奈良県で行われている官製お見合いでは、100組以上のカップルが成立しています。

しかしながら、地方自治体主体で行われているという性質上、財源不足で開けずにいる自治体があります。また、そもそもお見合いを開こうと考えていない自治体すらあるのです。

そこで、この結婚支援センターが、地方自治体に対し積極的なお見合い開催の働きかけ、財源の支援、お見合い開催のノウハウ提供を行うことで、全国にわたって均一のサービス提供ができます。

また、民間においては、結婚相談サービスが活発です。しかしながら利用に関して、入会金が高い、成婚率を公表していない、個人情報管理に不安があるという障害があります。

そこで、結婚支援センターが、民間の結婚相談サービスを能動的に厳しい基準で評価、安全性や、サービスの質をランク付けし公表します。これにより消費者にとっては安全性と安心感だけでなく、サービス事業者にはサービスの質の向上を促すことができるのです。


2点目の、結婚支援貸付金制度は、結婚段階における「結婚資金」の問題に対応するものです。
これは、結婚を望む男女に対し、1点目の政策で提示した結婚支援センターが窓口となり、無利子で金銭を貸し付ける制度です。

額の大きくなりがちである結婚資金を貸し付け、分割で払えるようにすることで、夫婦が結婚のために貯蓄する必要がなくなり、結婚を思い立った時点での結婚が可能となります。


【展望】
以上の政策を行うことで、「結婚したい」と切望するにもかかわらず、「出会い」そして「結婚資金」に問題を抱えるために結婚できない人たちを、結婚という「望む未来」へ導くことができる。

結婚を望む男女が「人生という名の道」を、愛する二人で、共に歩むことができるのです。

辛い時、苦しい時。
「愛する男女」が共に支えあい、共に歩んでいかなければなりません。

そう、人は独りでは生きていけないのですから。

ご清聴ありがとうございました。

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