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演題 「対日直接投資」

弁士 木佐貫彩夏 (政1)

【導入】
経済成長。それは、個人にとっても 国家にとっても 必要なものです。
経済が成長すると、求人数が増えます。給料が増えます。必要なものをより多く買う事が出来ます。
また、国家の税収が増えます。国民へのサービスがより充実します。貧しい人の生活水準を上げることもできます。

そう、経済成長は、私たちの「可能性」という道を、大きく広げてくれるのです。

【現状分析@】
しかし現在、日本経済は悪い状態にあります。ここ 20 年の平均経済成長率は 1%にも満たないですし、2008 年以降は大きなマイナス成長。失業率も増加しています。私たちの道は、狭められている状況にあるのです。

本弁論の目的は、こうした日本経済を活性化させ、個人も、国家も 経済成長の恩恵を受けることにあります。

【現状分析A】

そこで、即座に経済成長率を上げる方法は何でしょうか?
そう!それが、対日直接投資、なのです。

対日直接投資とは、外国の企業が、日本の企業に経営支配を目的にお金を投資したり、日本に直接、法人を設立することです。

対日直接投資が 10%上昇すると、経済成長率が 1.5%上昇する、という計算が出ています。1.5%の上昇は、税収を 15 兆円も増大させるので、極めて大きい数値だと言えるでしょう。

ここで、外資が多く入ることにより、国内の企業が衰退してしまうのではないか、と、心配する方もいるでしょう。

しかしながら、例えば、外資系企業であるアフラックが、はじめて日本に「がん保険」という概念を持ち込みました。これにより、日本にがん保険という巨大な市場が開拓され、日本の保険会社の収益も増大しました。
また、日本のコーヒーチェーン市場に、スターバックスが参入し、ドトールやタリーズといった国内企業の活性化に一役買いました。

こうした活性化の背景には、政府による規制緩和がありました。
その結果、日本の外資規制は、他国よりも緩いものとなり、投資が増えてきたのです。

【問題点】
それでも現在、対日直接投資は極めて少ない状態にあります。

対日直接投資額は現在 15 兆円であり、日本の対外直接投資額の、わずか 4 分の 1 しかありません。
また、GDP に対する対内直接投資残高の割合は、先進国平均の 25%を大きく下回る、わずか 4%となっています。ここで注目したいのが、日本に投資をしたい企業の数は、世界で 22 位。しかし、実際に投資をした企業の数は131 位である、という国連の調査です。
つまり、日本に投資を行おうとする企業の潜在的な数に対し、日本に実際に投資をした実績数が見合っていないということです。

【原因分析】
それでは投資をしたいと思っている企業が、実際に投資を行えていないのは何故でしょうか?
それは、投資を実行する過程で、何かしら投資を阻害する要因があるためだと考えられます。

投資を阻んでいる要素として考えられるのは、以下の 2 つです。
1 つめ、情報の発信力の不足
2 つめ、手続きの煩雑さ
以上の 2 つです。

これは、内閣府の「日本への投資を阻害する要因は何か」というアンケートに基づくものです。

まず 1 つ目の、「情報の発信力の不足」について説明します。
外資系企業が投資先の国を決定するにあたり、まず必要となるのが、投資環境の情報です。
現在、対日直接投資に関する情報は、政府から委託され、ジェトロが提供しています。
そのため、市場や地域、法律などの、日本の投資環境に関する情報も、ジェトロが扱っています。

しかしアンケートによれば、そもそも「ジェトロを知らない」と答えた外資企業は 80%以上に上っています。そのため、日本の投資環境に関する情報を、どこから得ればいいのか分からない。これにより、「情報不足」となっている企業が多いのです。

その一方で、シンガーポールやイギリス、フランスなどは、省庁を形成して、トップセールスを行うなど、積極的に対内投資を促進しています。その結果、その認知度は高く、外資からの投資も多いものとなっています。

これは、ジェトロが対日直接投資を専門とする機関ではないため、情報を持っているだけで、自ら発信するまでにいたっていないこと。そして、国家機関ではないため、情報発信力が弱いことが原因であると考えられます。

続いて、2つ目の「手続きの煩雑さ」について説明します。
情報を集め、日本に投資をしようと思ったものの、手続きが難しいといった問題があります。日本は、対日直接投資を行うための総合窓口を、ジェトロに委託して設置しています。
しかし、その窓口へアクセスしても、その後、様々な機関にたらい回しにされるのです。
たとえば、日本では、地方自治体や日本政策投資銀行など、外資系企業へ優遇制度を行う所は多くあります。外資企業は自ら、それぞれの窓口に申請しに行かねばなりません。その一方で、アメリカやイギリスなど、他国の場合は、これらの手続きをすべて代行して行ってくれるのです。

また、法務や会計サービスにおいても、日本では、弁護士をはじめ、公認会計士、行政書士、司法書士、社会保険労務士……といった、多くのスペシャリストに声を掛けて回らねばなりません。
その一方で、ドイツなどは、外資誘致機関に、対内投資専門の人材を常に置いています。そのため、そこでワンストップサービスを受けることができます。

このように、対日直接投資を専門とする機関がないため、対日直接投資に特化したサービスを提供することができず、手続きが煩雑になっていると考えられます。


以上の「情報発信力の不足」と「手続きの煩雑さ」という問題点に対して、私は以下の 1 点の解決策を提示します。

それは、「対日直接投資を 専門とする 国家機関の設置」です。

それでは、「対日直接投資を 専門とする 国家機関の設置」について詳しく説明します。
この機関は、経済産業省のもとに設置します。
この機関のもとには、通常の運営に携わる人に加え、不動産や事業計画、法務や経理など多岐にわたる専門のアドバイザーも常駐させます。

この機関が行う業務は以下の 3 つです。
1 つ、投資環境の情報提供
2 つ、情報の発信
3 つ、代行サービス

まず 1 つめ、投資環境に関する情報提供
これは、従来のジェトロが行っていた業務となります。要求に応じて、必要な情報を提示するものです。

続いて 2 つめ、情報の発信
これは、1 つめの阻害要因である「情報発信の不足」に対応したものです。
個々の企業に働きかけることはもちろん、雑誌や新聞・CM といった媒体も利用します。
また、国家機関であることにより、情報発信力が大きくなります。これにより、情報をどこから得ればよいのか分からない、といった「情報不足」が解消されるのです。

最後に 3 つめ、代行サービスこれは、2 つめの阻害要因である「手続きの煩雑さ」に対応したものです。
先ほど、働く人材でも述べたとおり、この機関には多くのプロフェッショナルが存在します。そのため、様々な申請・登録手続きを代行して行う事が出来ます。そして、この機関内でそれらの手続きを済ますことができるので、ワンストップサービスも提供できるのです。

以上の政策で、「情報発信力の不足」と「手続きの煩雑さ」という 2 つの投資を阻害する要因が解消されます。
それにより、日本に投資を行う企業が、潜在的な数の多さに見合ったものとすることが出来ます。

現在、各国の企業誘致競争は、非常に激しくなっています。日本はその競争に立ち遅れている状況にあるのです。
対日直接投資を増やすことで、日本の経済が活性化します。そうすることで、わたしたちの目の前に、広大な道が開けるのです。

ご静聴、ありがとうございました。

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