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演題 「七転八起の市場主義」

弁士 吉田昌弘 (商2)

「皆さんの将来の夢は何ですか?」「そこから何を得たいですか?」「その答えは一人ひとり違っても、幸せになりたい、と思うのは共通しているのではないでしょうか」
「私は自分の会社を持ちたい」「起業家になってお客さんが喜ぶ商品を売りたい、それが私の将来の夢です」

起業家にとって開業とは、自分の夢を追求できる、まさにベンチャーなのです。
こうした起業家が、新技術やアイデアを使って革新的・創造的な経営をすることで、例えば“がんワクチン”や“太陽光発電”など、数多くの商品やサービスを私たちに供給します。

近年、ベンチャー企業、いわゆる新興企業に、期待が集まる理由は、日本経済が疲弊しており、経済の活性化、が必要であるためです。
新興企業の役割は、(1)今ある商品や、サービスの品質の向上、そして、生産方式やノウハウの水準を、向上させることです。実際に、4社に1社が新技術や新たな生産方式を取り入れ、新しい商品やサービスを供給します。
これにより、(2)新市場が出来、新たな消費を呼び、そして、設備投資を生みます。実際に、新規開業の方が、設備投資に対する、新たな価値の創出が、2倍以上であることからも、景気循環の出発点になる、と、大いに期待されます。
また、企業の役割のもう一つの側面、(3)雇用の面では、毎年約200万人の雇用が、創出されます。これは、既存企業の2~3倍の雇用となっており、新規開業の優位性は、高くなっているのです。

開業を望む人は増加傾向にあり、今では130万人、もいるのです。しかし、実際に起業している人は1割もなく、起業しても、倒産してしまう企業は、1年で40%が、10年後には、なんと9割にも昇るのです。さらに倒産した人の、約半分が自己破産。これが起業の促進を阻んでいるのです。

本弁論の目的は、こうした起業を阻む問題を解決し、日本経済の活性化を、達成することにあります。

では、起業の促進を阻む問題とは一体何でしょうか?
私は以下の3つに問題があると考えます。
1つ目、起業前の、資金調達の困難さ
2つ目、起業後すぐの、人材確保が出来ずにいること
3つ目、倒産前の、倒産の判断が容易でないこと
以上の3つです。

まず、1つ目の“資金調達”について、創業の準備には、お金が必要であり、これが起業前の課題の5割を占めます。これに対し、日本公庫では、1,000万円まで無担保、無保証の融資を、行っています。けれども、創業に必要な資金は、1,000万円以上で、残りを銀行からの借入れに頼ります。
銀行の借入れは、担保や保証人を用意すれば、借りることが出来、結局8割もの人が、銀行に頼っています。しかし、借入れは、経営が安定しない時期でも、返済を要求されるため、創業前には避けるべきなのです。
なぜ借入が多いのでしょうか?この原因は新興企業への投資が少ないからです。エンジェルと言う、約1万人の個人投資家が投資をしていますが、200億円ほどの小さな市場になっています。その理由は情報ネットワークが小規模であり整備されていないためです。つまり投資家がいても、投資先が見つからない、というミスマッチが生じているのです。

次に、2つ目の、起業後すぐの“人材確保”については、人材の用途のほとんどが営業部門であり、この人材の確保が、企業の成功と失敗の、分かれ道となります。しかし、実際は、4社に3社が人材調達に悩み、「優秀な人材が欲しい、だけど来ない」という、ジレンマが起きているのです。
なぜ人材が集まらないのでしょうか?この原因は、創業後すぐの企業は、資金もなければ、名声もないからです。そのため、人材は、安定性の高い、大企業に流れるため、新興企業が人材を確保できず、売上が悪くなり赤字が発生する。この悪循環が起きるのです。


最後に3つ目の、倒産前の“倒産の判断”について、倒産する起業家の約6割が半年前までに倒産すると気付いています。けれども、目先の資金繰りだけを気にして、無理な経営をし、結局、4社に3社が、5,000万円以上の負債を、抱え込んでいます。これに対し、相談施設はありますが、相談した時点で、すでに手遅れなことが多く、自己破産をしてしまうのです。
なぜ手遅れになるのでしょうか?この原因は、倒産をすることで、生活の糧が、なくなってしまうからです。これにより、赤字を膨らませてまで経営をし、起業家の倒産の判断を、鈍らせるのです。そして、この自己破産が、負の要素として強く映り、起業する意欲を、削っているのです。

では、これらの問題の解決のために2点の解決策を提示します。
1点目、ベンチャーネットワークと登録制度の確立
2点目、ベンチャー機構の創設
以上の2点です。

まず1点目のベンチャーネットワークと登録制度について、このネットワークは、個人投資家と、起業家が参加する情報網です。今までも、ネットワークはありましたが、集中管理する機関がなく、小規模な集まり、となっていました。そこで、ネットワークを、大規模化することで、情報が簡単に入手でき、投資家と起業家の、ミスマッチを解消します。
欧米では、投資家の大規模なネットワークがあり、投資家数、投資額ともに増えていることからも、日本でも十分に増えると言えます。

また起業家側には、登録制度を設け、情報の提供を、義務付けます。ここでは、2つに分類し、起業したい人と、そして仕事がなくて起業する人に分けます。
この理由は、仕事がないから起業をした人、が半分以上おり、こうした人が倒産し、破産をすることが、多いためです。そこで、こうした人には、起業家としてではなく、労働力として、登録することを勧めます。

では、このシステムをどのように運用するのか、ということで、2点目の解決策、ベンチャー機構の創設に移ります。この組織は日本証券業協会と、商工会議所の連携により成り立つ、新興企業の活性化のための、新たな組織です。そして、この役割は以下の3点です。
1点目、ベンチャーネットワークの維持、及び管理
2点目、登録制度の審査と人材の提供
3点目、株式の預かりと客観的な、倒産の判断
以上の3点です。

1点目は、ベンチャーネットワークを維持、管理し互いの情報を提供させることで、投資家と起業家の、ミスマッチを解消するのです。

2点目は、起業家が、ネットワークに入れるのか、の審査をします。日本証券業協会は、新興市場を運営し、起業家を見抜く力は、十分あります。さらに起業を避けた方がよい、と判断した際には、今度は商工会議所が、新たな労働力として、新興企業に勤めてもらうように、勧めます。また、その企業が、倒産した場合には、新たな働き口を見つけ、新興企業に提供します。

3点目は、投資家が買った株式を、一時的に預かり、新興企業の経営に、関与します。そして、新興企業の、経営状態が悪い際には、商工会議所が、客観的な判断をし、倒産すべきか、の相談を新興企業と行います。また倒産する、と決定した際には、株式を使って事業売却を行い、負債の整理を行うようにします。これにより、企業は倒産しても、起業家の個人資産は守れるのです。

以上2点の解決策により、開業を望む人はこのように開業が出来ます。
まず、資金面では、投資家と起業家の、ミスマッチが解消され、投資により、自己資本として、資金調達が出来、倒産リスクが回避されます。
また、人材面では、登録制度を設けることで、仕事がないから起業をして、破産をしていた人を、救うことが出来ます。また、登録してもらうことで、新興企業への、労働力の確保も、出来るようになります。
さらに、倒産の判断を、客観的にすべき企業には、株式を使った経営の関与と、事業の売却により、企業は倒産しても、起業家を守ることが出来ます。
こうして、起業家が増えることで、開業意識が喚起され、新たな起業家が生まれ、私たちにさらなる恩恵を、運んでくれるのです。

こんな、競争し、その中で転んでも、起き上がれる社会に変えたい、そのためにすべきこと、それはこの、新しいシステムを、導入することです。

ご清聴ありがとうございました。


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