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演題 「光の対価・科学の影」

弁士 林三紀也(営1)

いま、私は科学の光のもとに居ます。また、皆さんも同じく科学の光を浴びています。この光は電気によって燈されていますが、最近、世界で、発電量の割合を伸ばしている物があります。
それは、原子力発電です。いま、世界で原子力ルネサンスとよばれる現象が起き、多くの国が、安定して大量の電力を供給できる、原発の建設や、計画を進めています。
たとえば、日本は、電気のうち約25%が原子力発電。2017年には総発電量がさらに上がり、原発の割合は42%になる見込みです。

しかし、原子力発電には世界共通の重大な問題があります。
それは、発電で、処理にとても時間がかかる、放射性廃棄物、通称、核のゴミ、が出ることです。核のゴミは、専用のゴミ捨て場が必要です。
ですが、ゴミ捨て場である処分場は、世界中で、必要な施設が足りない、あるいは、存在しない、といった状況なのです。
今、原発を使う、すべての国を悩ませる種で、とくに国土の狭い日本や韓国、ヨーロッパの国々はより深刻です。
そんな中で、はたして出るゴミは管理できるのでしょうか。
ゴミ処理は、先ほど述べたとおり、施設が足りない、あるいは存在しないのです。
そのため、もし、核のゴミの管理ができないと、政府や、電力会社は原発を止めるでしょう。すると、日本では約3割の電気が供給されなくなります。
もしも、日本全土が、丸一日停電したら、GDPで約1兆5000億円の損失が出るのです。
実際、2007年、日本は電力が足りず、一部工場の操業停止に追い込まれました。
電力不足が常態化すると、生活、産業、ともに計り知れない経済損失を与えることになります。
そして、今のままだと、この問題は、ほかの国々にも起きます。
このように、核のゴミは将来、解決しなければならない問題です。

日本の現状を見てみましょう。
日本では、核のゴミは大きく2つです。1つは低レベルゴミ。このゴミは、とにかくたくさん出ます。自然界より放射線濃度が高いゴミで、日本では、毎年ドラム缶2万本以上出ています。
これは、なんと、今の、貯蔵と処理施設の余裕を考えると、たった20年で、容量オーバー。 
さらに、2つ目のゴミである、高レベルゴミ、あるいは原発の燃料だった使用済燃料。
特徴は、放射能が強く、処理にとても時間がかかることです。
現在、一時受入の施設を増設中で、このゴミ2880本が入るようになります。
ですが、ゴミ発生量はもっと緊迫しています。2020年には高レベルゴミ4万本分に相当する使用済み燃料がたまる、というのです。
しかも、ゴミの具体的な処理予定は決まっていません。

しかし、政府も手を打たなかったわけではありません。解決策として「原子力発電環境整備機構」通称NUMOを2000年に設立して、最終処分場を国内で探し始めました。
2007年、高知県東洋町では、この処分場を作る調査に町長が応募。
調査には、応募だけで、多額の交付金が、国からもらえるという好条件でしたが、住民は反対、町長の出直し選挙に至りました。結果、反対派新人が70%の圧倒的な支持で、NOを明確に突き付けました。
このことから、国内処分場問題は住民の理解が得られないということがわかります。

海外の状況を見ましょう。
フランスでは、79年からゴミ捨て場を探していますが、一向に見つかりません。
韓国では2016年に、高レベルゴミが貯蔵しきれなくなる、と言われています。
アメリカでは、最終処分場が決まり、600億ドルの予算が施行され、建設中。しかし、政治的問題で、オバマ政権はこの施設を使わない、としています。重要な問題ですが政治でも簡単に揺らいでしまいます。

ゴミは確実に増えているのに、施設をつくれず、また、作ったとしても使えず。
これは、一国で行うゴミ処理に限界があると考えられます。
住民感情や政治的要因。また、国土が狭く、理解の得られる処理場を作れない。
これらの要因が重なり合い、簡単に処理できない現実がある。
そして、ゴミ処理場が作れない問題の根本は、住民の理解です。
住民の、理解を得るためにも、一国で無理をして行うのではなく、多くの国と協力して問題解決にあたる必要がある、と考えます。

ではなぜ、多くの国と協力することによって、住民の理解の問題が解決するかを説明すべく、政策の説明に移りたいと思います。
問題解決のため、私は2つの政策を提案します。
1つ、国際原子力機関、通称IAEAのもと、核のゴミの国際取引体制を作ること。
2つ、その取引の運営・監視をする担当局を設置すること。

1つ目の政策ですが、
なぜ国際取引とするのか。

国土が小さい、地震など、地盤に不安のある、処理技術が発達していない、などの国があり、長期のゴミ保管には安全性を欠く国が多いのです。ですので、安定した地盤や広大な土地など、管理条件の適した、海外の広大な土地を持つ国での処理は、時間を節約し、管理の安全性を高めます。
処分場の問題解決には、住民の理解を得るに足る、安全な施設を作ればよいのです。
後述しますが、国際取引では、多くの国がかかわるので、各国が最先端技術を提供し、安全性の高い施設を作れます。
管理の安全を高め、住民の施設への不安を取り除き、処分場への理解を得ます。
また、これから、ゴミ問題を抱える国は50近くになり、取引は明確なメリットとなります。

2つ目の政策の担当局を設置ですが、IAEAにあることに意義があります。
IAEAは国際機関で、多くの国が加盟しています。さまざまな国の加盟で、組織の中立性が保たれ、監視、運営を公正に行えます。
IAEAは一定条件満たす複数の加盟国に、ゴミ受入施設の共同調査を依頼。
地盤や土地の広さなどの条件で、受入可能ならば、施設建設の監督、技術のあっせん、施設の監視など支援し、取引体制を構築します。
運営面では、3つを主な活動内容とし
1つ、放射能漏えいの危険が限りなく少ない施設の建設支援。
2つ、ゴミ処理仲介
3つ、価格決定
を行います。

1つ目、多くの国が加盟しているので、日本やアメリカなど原子力先進国が開発した、処理施設に関する技術を、施設建設国に供与して、最高の安全性を持つ施設を作ることができます。これで住民の不安要因を取り除き、理解を得ます。

2つ目、ゴミはIAEAを通す形で処理されます。処理したい国はIAEAに将来の、何年分かの処理計画を提出し、IAEAが、各国のゴミの量を把握。情報をもとに、受入条件を満たす、広大な土地を持つ複数国が、ゴミ処理の依頼国を募ります。
受入国が先行投資として一部の建設費を負担し、残りを依頼国に出してもらい、施設を建設。という作業を仲介。
この仲介役が存在することで、各国での調整が円滑に行え、取引の障害を取り除く有効な手段となります。

3つ目、取引には、価格が必要。しかし、公正さも必要。
そのため、価格決定も担当局の仕事です。施設の建設費・管理費を考慮して価格を算定。算定した価格を基準に上限、下限を設けます。制限で依頼国・受入国ともに過剰な負担を強いられない取引を行えます。
そして、この料金の一部を手数料としてIAEAの担当局に支払、資金面でも、安定した管理体制を作ります。
監視面でも、3つを主な目的として行動します。
1つ、IAEAが受入国と事前共同調査をすること
2つ、行方不明ゴミを出さないよう監視
3つ、建設後、周辺環境への影響を受入国省庁と共同で調査です。
これにより、事前、事後、管理中も安全な管理ができます。

世界の核のゴミは増える一方です。しかし、ゴミの問題が解決は、世界で、生活に、産業に、必須の、電力エネルギーの一端を担う、原子力発電を社会が不要とする日まで支えることができるようになります。

いま、私は光のもとに居ます。そして、科学が作った光は私の前方を照らし、世界を、未来を、見せてくれるでしょう。ですが、同時に私の足元に影を作ります。
ですから、前を見るだけでなく、今から影に向き合っていく必要があるのです。影と向き合い、光の対価を支払えるよう、時間がかかる問題だからこそ、今から解決できるよう願い、弁論を終わりたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。


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