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演題 「人々は古来より」

弁士 後藤和也 (法2)

人々は古来よりさまざまな災害をこうむってきました。大雨・台風・地震・火山の噴火などをはじめとする災害によって多くの人が亡くなり、困難な生活を強いられてきたのです。
阪神・淡路大震災以来、国や各自治体はさまざまな対策を行ってきました。災害計画の整備から始まり、治水事業、土砂災害の防止策、地震対策においては、耐震化事業や帰宅困難者に対する避難所の確保などを進めてきました。
しかし、まだこれらの対策に不備が残っているということを私はここで言いたい。
それは、「被災者支援」です。
本弁論では、この被災者支援の不備について述べたうえで、対策を打っていきたいと思います。

まず、こういった災害の時に一番大事なものはなんでしょうか?(間をあける)

それは「被災者の命、そして生活」です。被災者の復興なくしては町の復興はありえないのです。
しかし、今現在、命を守るための避難に関する情報が行き渡らないという第一の問題、生活の基盤である住居の確保という第二の問題があるため復興を妨げているのです。
今現在、防災計画などにはさまざまな対策がうたれていたり、検討されていますが、この2つの問題には対策がうたれておらず、不備が続くとさらなる被害が生まれてしまいます。
では、具体的に問題をみていきます。

第一の問題点として情報が正確に行き渡らない、ということがあげました。
情報を伝えることがなぜ重要なのかと言いますと、情報は災害避難の根本であり、身に迫る危険・危険区域・避難場所・そもそも避難しなければならないのかといった情報なくしては避難もできないからです。
現状、避難勧告などの行政からの指示は防災行政無線によって住民に伝えられます。これは主にスピーカーによって伝えるものであり、現在の全国の整備率は75%ほどなのですが、実際に大雨などが降ったときや夜には戸を閉めているため伝わらないことがあるのです。
例えば、2004年の新潟・福井豪雨の時には、新潟県三条市の五十嵐川の堤防の決壊により7名の方が亡くなりました。決壊の1時間半前には避難勧告が出されていたにもかかわらず、7名の方すべてが自宅またはその周辺で決壊後数時間から翌日にかけて水死してしまいました。
市の側は、避難勧告を広報車で伝えて回った、といっていますが、その方々の近所の人に聞くと「避難勧告」など聞こえなかったといっており、この「情報伝達の不備」により亡くならなくてよい尊い命が失われてしまったのです。
ほかにも、昨年の集中豪雨があった岡崎市には防災無線がなく、市が地区の代表者552人に個々に電話をかけざるをえませんでした。さらに代表者がそこから住民に連絡しなければならず、そもそも市から連絡が来なかったという代表者の人もいるなど、このように情報伝達の不備が各地でおこっているのです。
これらの例からも、情報は、広く浅くでもなく、せまく深くでもなく、1人1人に正確に伝えなければならないのです。

第二の問題点として住宅の確保ということがあげました。
なぜ住宅かといいますと、人間の生活において欠かせない衣食住の中でも住宅というのは非常に経済的負担が大きいからです。たとえ賃貸であっても大規模な震災がおきた場合などはその周辺一帯が被害を受けるため再び家を借りることも難しくなってきます。
今現在、被災者の住宅支援に関する公的支援としては被災者生活再建支援法があります。この法律は住宅被害に応じて、全壊で建て直しの場合で最高300万円、半壊で補修の場合は最高150万円を国及び都道府県から拠出した基金から半分ずつ支給されます。
この全壊、半壊または一部損壊などという被害の程度は国が定めた基準をもとに市区町村職員が数値化して全体の損害率を割り出します。しかしながら、判断するのが建築物に素人である自治体職員であるため、基準があるにしてもブレが生じてしまいます。しかも、そもそもこの基準というのは主に外見からみた損壊の基準であり、地盤の損壊に関する項目がないため、外からみてもそんなに大きな損害がなく一部損壊でも実際は基礎の部分にゆがみがあり1000万円以上の修築費がかかる人もいるのです。
実際に中越地震の被害を受けた小千谷市では約1万6千棟の家屋を調査したのに対し、4千6百件あまり、約3分の1が異議申し立てを起こしており、素人ではなく、専門家よる、より正確な判定が求められます。
住宅支援としては以上にあげた公的支援の他にも任意による地震保険制度があります。この保険は火災保険の付帯保険であり、家の構造、支払われる保険料、都道府県によって支払う保険料が異なります。例えば、保険金額1000万円であれば、1年あたり最も安いところで5千円、最も高いところで3万千円となっていますが、今現在の地震保険の世帯加入率はたった20%ほどでしかありません。
また、保険料の支払いには限界があるため、国の再保険制度というので保険料の不足分を補っています。しかしながら、法律によって5兆円をこえる被害が発生した場合には支払いが免除されており、首都直下地震のような大災害が発生した場合は、保険料を払っていても適正な援助を受けることができない可能性もあるのです。

以上の「情報伝達の不備」、「住宅再建支援の不備」の2つの問題点を解決するべく、2つの政策を提示したいと思います。
1つ目、「戸別受信機の義務化」、2つ目「災害保険の共済化」
以上2つです。

1つ目の、戸別受信機の義務化により、戸別受信機を全国の住宅に設置します。
この戸別受信機とは1つ1つの家に行政から災害情報を伝えるもので、今現在全世帯に設置されている自治体は20%ほどありますが、大規模自治体に限ってみると、ほぼすべての自治体が全世帯の10%も設置していないのです。情報を伝える範囲が大きい大規模自治体こそすばやく、正確に伝達できる戸別受信機が必要です。
しかしながら、今現在ほとんどの市町村が、購入して住民に貸与するという形をとっているため3万円前後かかる機器を整備するのは容易ではありません。
そこで、受信機の購入費は住民の負担とし、住民税として徴収します。ただし、いきなり払えないという人に対しては数年に分割して支払うなどの措置をとります。こうすることにより金銭的に厳しい人でも購入することができます。

2つ目の「災害保険の共済化」とは、被災者生活再建支援制度、地震保険制度に変わる、保険料の上限のない、災害すべてに対する共済保険です。
この制度は、今自動車保険にある自賠責保険を目安にするものであり、民間の損害保険会社を保険の窓口として実際の保険料の査定は自動車と同様に損害保険料率算出機構が基準を作って行います。査定が難しい場合は私の政策で新しく作る専門家の災害保険審査会が査定を行います。
この制度でのメリットは、「専門家による災害認定の公平化」、「災害全般への保険の拡大」、「保険料の増額」であり、問題点がすべて解決されるのです。
実現性に関してですが、確かに一年や二年では最大規模の災害には対応できないですが、十年以上金額をプールしていけば十分対応できるだけの金額を集めることができます。必要以上の金額が集まれば耐震化事業や治水事業などの災害対策も行うなどの有効活用をしていくこともできます。

以上の私の政策により、1つ目の問題点であった情報伝達が整備されて、救うことのできる命を確実に救うことができます。
そして、2点目の問題点であった住宅支援の整備がされることにより今まで家を再建できなかった人や適正な援助を受けられなかった人を救うことができるのです。

皆さんも「地震、雷、火事、親父」と聞いたことがあるでしょう。親父は台風を表すものとされており天災は古くから恐れられてきました。そして、今日においても私たちの生活に多大な被害を及ぼす天災は恐ろしいものであり、多くの人が亡くなり、障害をおってきました。こうした目に見えない脅威に対して私たちは十分な準備と支援がなければならないのです。
ご清聴ありがとうございました。


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