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演題 「日本女性と労働」

弁士 早川賢太 (商1)

「働きたい。でも、働けない。」それが、我が国日本の女性労働の実態である。 現在、働いている女性の64%が今後結婚し出産をしても「継続就業したい」、「再就職したい」と考えています。 さらに専業主婦の91%が今後チャンスがあれば働いてみたいと考えています。

にも関わらず、日本では出産を機に67%もの人が仕事を辞めています。 さらに、中途採用を実施している企業の61%もが子供を持つ女性の採用はおこなっていないのです。

実に嘆かわしい事態だ。 「労働力不足、労働力不足」と叫ばれる現代にあって、「女性」という労働力を活用しようとしていない。 女性は労働力として、企業になんのメリットもないのだろうか。

……いや違う!女性を積極的に雇用し、女性が働きやすい職場を整えることは、企業にも、そして日本という国に対しても大いにメリットがあるのです。

最初に企業側のメリットについて述べましょう。端的に述べますと、女性の積極的雇用は業績の向上につながります。 これは、2003年に経済産業省がおこなった調査でも明らかとなっています。 しかし、これは単に女性の絶対値を増やせばいいという問題ではありません。 この結果の背景にあるのは、多様な人材を活用するための取組があり、またそれらの取組と「仕事と家庭の両立支援」を行っていることです。 それによって、企業風土が変わり、ひいては業績の向上につながるのです。 公営労働省の調査では、「子育てがしやすく、女性の昇進機会が男性と同じ程度だ」という企業では、そうでない企業と比べると、女性では仕事への満足度が35%高く、男性においても26%高いのです。 さらに、仕事への意欲を見ても女性で25%高く、男性で20%高いのです。 女性の働きやすい職場を整えることは、女性のみならず男性の意識をも変え、企業風土の活性化とともに業績の向上につながるのです。

次に女性の積極的雇用と職場環境づくりが日本にもたらすメリットを述べましよう。 なんと内閣府の調査で、近年では、OECD24カ国の国際比較においても、国内47都道府県の比較においても、女性の労働力率の高い国や都道府県のほうが出生率が高いという傾向が見られるのです。 女性の雇用増大が出生率の向上につながれば、女性という労働力の活用のみならず、その後の子や孫世代、そして延々とつながる、長期的な労働力の確保が可能となるのです。

しかし、これほどまでにメリットの多い女性の活用ですが、最初に述べた通りなかなか女性の雇用が進んでいません。 そこには、やはり企業側が女性を雇用するディスインセンティブや、女性が働き続けるうえで障害となるものがあるのです。

これからは、女性の雇用の妨げとなっているものを分析しつつ、その原因を探っていきたいと思います。

まず、企業側が女性を雇用するディスインセンティブとはなんなのでしょうか。 厚生労働省の調査では、企業が「女性の活躍を推進するうえでの問題点」として、上位二つに、48%の企業が「家庭責任を考慮する必要がある」、43%の企業が「女性の勤続年数が平均的に短い」ということを挙げています。 つまり、企業側にとっては「出産」や「家事」というものが大きなディスインセンティブとなっていることが考えられます。

現在、夫婦ともに正規職員である家庭の家事・育児分担割合をみると、子供がいる家庭において88%もの家庭が男性より女性が家事を多く担っています。 育児休業の取得率を見ても、女性が90%であるのに対し、男性の取得率は1,56%しかないということも、家事や育児が女性に重くのしかかる状況に拍車をかけています。 このような状況では、企業側も女性の家庭責任を考慮せざるを得ないでしょう。

次に、「女性の勤続年数が平均的に短い」という問題について述べたいと思う。 最初にも述べた通り、「働き続けたい」という女性が多くいるにも関わらず、出産を機にやむを得ず職を離れるケースが多いという状況を見てわかる通り、出産が女性にとって予想以上の負担となっていることがうかがえる。 これは、企業やの育児へのサポート体制が十分ではないからである。 内閣府の調査で、「日本の男女共同参画が遅れている理由」について、64%の女性が「仕事と家事・育児・介護等との両立支援制度を活用できる雰囲気がない」と回答しています。 つまり、制度があっても活用できない雰囲気があるのです。

それでは、このような問題を解決し、女性が働き続けることができる環境づくりをするにはどうしたらいいのでしょうか。

私はその解決策として、育児休業の柔軟化と男性の育児休暇の促進を提案します。

女性は出産後の再就職として、79%の女性がアルバイトもしくはパート労働者という職業形態を望んでいる。 その理由として、「時間に自由のきく職業スタイルだから」と答える女性が多い。

そこで、出産後も継続就業を希望する女性のために、正社員にもこの時間の柔軟性を持たせたいと考えています。

出生率の高いフランスの政策に、「育児親休暇制度」というものがあります。 これは、勤務して1年たてば、3歳未満のこどもを持つ両親のいずれも取得の権利があり、フルタイムで休むことも、ハーフタイム、パートタイムで休むことができます。 また、父母同時に取得することも、片方ずつ連続して取ることも可能です。 期間は最長3年で、最初に1年間、次いで2回までの更新が認められます。更新時に、ハーフタイムか、パートに切り替えるなど、選択の変更も自由にできるのです。 この制度を日本にも導入し、就業継続を促すことができます。

もうひとつの「男性の育児休暇の促進」によって、男性の育児への参入を促すとともに、男性の家事や育児への理解が深まり、男性の積極的な育児活動が期待できます。 それによって、女性の家事や育児での負担が減り、育児と仕事との両立が可能になります。

そして、男性の育児休暇の取得を促進するために、新潟市で取り入れられている「男性の育児休業取得奨励金」を導入します。 これは育児休暇を取得した男性従業員と事業主に奨励金を与える制度です。 これによって、現在の低い男性の育児休暇取得率を上げ、女性の負担を減らすことも可能になるのです。

前にも述べましたが、子育て支援がしっかりしている企業というのは、男性・女性ともに仕事への意欲が向上しています。 こういった子育て支援をおこなうことで、社内の意識改革を図り、雰囲気の改善が期待できるのです。

これらの政策によって、女性の社会進出が促進されます。 そうすることで、短期・中期的なスパンで、女性の就労を促進することによる企業の業績の向上が図れるとともに、長期的なスパンで考えると、将来の労働力の確保が可能となるのです。

女性が働く理由はたくさんあると思います。「生活費を稼ぐため」、「自分の生きがいだから」、はたまた「自らのスキルアップのため」と考えている人もいるでしょう。
理由は無数にあるにしろ、女性が働きたいと思っていることは確かです。
女性の社会進出を促進しましょう。
女性たちが「働きたい。でも、働けない」という社会から脱して、こう言えるように…

 「働きたい。だから、働いている」

ご清聴ありがとうございました。


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