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演題 「創造的な世界へ」

弁士 真崎博瑛 (法2)

知的財産。読んで字の如く、「知」の「財産」です。知的財産とは、特許権・実用新案権・意匠権・商標権・著作権などのことを言います。
こういうと、難しく考えてしまう方もいるかもしれませんが、例えば、今や日本人のほとんどが持っている携帯電話。これには、1000以上もの、「特許」によって守られている技術が使われています。
他にも、シャネル・コーチ・エルメス・ヴィトンといった、有名ブランドの商品のロゴマーク。これらは、「意匠権」というものです。

我々の生活の周りには、このような「知的財産」が溢れています。
財産は、侵害されてはならない。ただし、その財産が人を不幸にしてはならない。
しかし、現状。この財産は、中国を筆頭に東南アジア諸地域で侵害されており、また、その財産が途上国の人々を不幸にしているのです。

現状、世界各国では模倣品・海賊版による被害が後を絶たず。

外務省によると、日本企業の約4分の1が模倣品被害にあっており、その被害総額は年間約1000億円。海賊版にしても、欧州経済への打撃は350億ユーロ、日本円にして約5兆4,000億円に上るとされており、合計すると全世界で年間約80兆円もの被害額となっています。

模倣品・海賊版の流通は、企業が本来得るべき利益を損失させたり、創作者の開発と創造意欲を減退させます。今日のグローバルな競争環境において,大小を問わず全ての企業にとって、創作者の開発と創造意欲を減退されるということは、その企業が、そしてその国もが、最悪の場合死滅してしまうのです。
模倣品・海賊版は他にも、例えば偽の薬品など、商品によっては、我々の安全や健康を脅かす危険もあります。

正規品の製造・流通するべきところが地下経済に取って代わられるということは、政府の税収が減り、雇用の喪失も生み出します。アメリカでは75万人が、インドでは82万人もの人々が、現状、このような被害が発端で職にありつけないのです。
また、海賊版の製造、販売には犯罪組織が関与していることも多々あり、テロリストの資金源となっている可能性も否めません。
他にも、他国で生産された自国の模倣品・海賊版が自国に逆輸入され、さらなる被害を招いています。

さて、このような情勢の変化に伴い、知的財産権の保護の強化が必要なるのは明白です。そこで成立したのが、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定、通称TRIPS協定です。
これまでは、特許などの、工業所有権の保護についてはパリ条約が。文学的及び美術的著作物、つまりは著作権などの保護についてベルヌ条約が。といったように、知的財産権の中でも、ある分野ある分野ごとに、それを保護する条約がばらばらになっていました。
TRIPS協定は、このようにバラバラに保護されてきた知的財産権について、世界規模でより高度の水準で保護し、技術革新の推進や、国際貿易における障害を軽減することを目的として設立された協定です。
しかしながら、協定が1996年に設立されたものの。特許庁によると、96年時点で日本企業の16%が模倣品・海賊版の被害にあっていたのに対し、今現在では25%以上、4分の1もの企業が被害にあっており、また、金額で言っても被害総額は3倍になっています。海外でも同様に、被害の増加・もしくは横ばいが80%近くとなっています。
このことから、TRIPS協定が機能していないことは明白です。

また、アフリカなど途上国は元来、特許の保護期間が5年・7年のように比較的短めに設定されていたり、ときには特許保護の概念すらない国もありました。
これは、特許を保護することが自国の産業の発達を阻害しないように考慮してなされていたことです。
しかし、TRIPS協定によって一律20年間特許を保護しなければならない。
特許を守るのは、それを守ることにより、発明・創作した人にインセンティブを与え、そこから新たなイノベーションが起こることが期待されているからです。

低い教育水準。
特許技術を利用するためのインフラの欠如。
新しい技術の利用と開発に対する不十分な制度や政策環境。
技術を利用する開発途上国や中小企業にとって比較的に高いコスト。など、つまるところ、特許を利用する基盤ができていない途上国では、TRIPS協定によるメリットはなんらなく、寧ろ自国の発展が遅れ、先進国との格差が広がってしまうばかりです。

TRIPS協定によって知的財産の保護が期待されるも、中国や東南アジア地域での模倣品・海賊版の横行は止まらない。
TRIPS協定によってアフリカなどの途上国は発展が阻害される。
これでは、当初の理念であった、技術革新の推進や、国際貿易における障害の軽減が達成されません。

そこで私は、以上の問題点を解決するべく、二つの解決策を提示いたします。
一つ目、各国政府の取り締まりの監視。
二つ目、国ごとの、特許保護期間の制定。
以上の二つです。

一つ目の、各国政府の取り締まりの監視、について。

TRIPS協定に参加している国々は、協定に乗っ取って国内の法を整備しました。
また、TRIPS協定には紛争処理手続を処理する能力があることにはありますし、今までも、企業から侵害している国々に対して、個々による訴訟はありました。
しかしながら、法を整備しても、政府からの地方に対する監視や取り締まりが徹底されておらず、法が有名無実化しています。
また、例えば外資企業が裁判所に訴えたとしても、その企業が地元の有力企業であれば、裁判官に圧力がかけられて、外資企業の主張が客観的に正しくても、裁判所は地元企業を勝訴させることも多々あり、外資企業が勝訴することは難しいとさえ言われてきました。

このように、政府からの監視が徹底されておらず、法に訴えても、企業レベルでは解決できないことも場合によってはあるなど、模倣品・海賊版被害が一向に減らないのは、他国からの監視が存在しないからなのです。

また、このような被害の急速な拡大に加え、インターネットによる拡散、模倣ラベルと本体の分割輸入、国際分業などの巧妙化といった、国際化する手口に効果的に対応するためには、世界各国が連携して新たに強力な監視体制を作ることが必要です。

そこで、各国政府が国内における模倣品・海賊版の製造・流通を見逃してないか。行われた裁判が妥当であるか等を監視・判断する機関をWTOから派遣します。
他国から監視されることで、政府もより一層の、実をもって取り組むようになります。これにより、全世界が国を挙げて模倣品・海賊版の撲滅に積極的となります。

もちろん、主にこのような模倣品・海賊版の横行のもととなっている、アジア諸国に対して、これらの監視を認めさせるのは難しいかもしれません。
しかしながら、このような被害は、被害国の産業にとっては死活問題なのです。
知的財産の重要性が増す中、それらを不当に侵害する。それにより、多くの雇用が喪失され、各国企業のブランドイメージを低下させる……断じて、許してよいものではありません。世界各国が協力して、圧力をかけてでも、制定すべきです。

二つ目、国ごとの、特許保護期間の制定、について。

先ほども申し上げた通り、途上国には特許を保護する基盤、利用する基盤がありません。今までアフリカなどの途上国の保護期間は、5年・7年、はたまた保護という概念がなく、それにより産業が発展していました。
そのような国々に対し、一方的に特許保護を義務化するのは難儀です。
そこで、各国の経済状況から、その国はどれぐらいの期間の特許保護なら産業の発展を阻害しないか判断し、それを規定します。
こうすれば、途上国が特許によって発展を阻害されず、無理なく成長できます。
期間の判断については、OECDの開発援助委員会の判断を仰ぐものとします。
これにより、先進国も途上国も、各国各国が、見合ったように特許を保護するようになります。

以上の私の政策により、模倣品・海賊版被害は撲滅の一途をたどり、途上国が特許保護の弊害を受けず、世界はより、豊かで、充実したなものとなるでしょう。

知的財産。読んで字の如く、「知」の「財産」です。
財産は、侵害されてはならない。ただし、その財産が人を不幸にしてはならない。
しかし、携帯電話にしても。ブランド品にしても。漫画やアニメといった娯楽にしても。財産は、本質的には我々を、世界を幸せにしてくれるものです。そう、世界を、創造的なものとすることで。

ご静聴ありがとうございました。

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