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演題 「確かな未来」

弁士 山崎いづみ(政1)

(1)今日ここにお集まりの聴衆のみなさん、
皆さんは“食べる”ことをどう捉えていますか?
“食べる”ことは、生きること、そして、未来を作ることです。

ところで皆さん、食べることもままならない未来を想像できますか?
現在、中国やインドなどの経済発展による食料需要の増大やバイオ燃料など食料以外の需要の増大による需要の大きな伸びに、砂漠化など生産条件の悪化が原因で生産量は思うように伸びず、食糧の需給が逼迫した状況です。
これから先、需給はよりひっ迫することが見込まれており、日本だけが安定的に食料の輸入を確保できる保証はありません。
食べることもままならない未来を皆さんは、どう思いますか?
将来、輸入が停止したときに、私たちの食を支えるのは、日本で生産された食料です。その食糧生産は一朝一夕に増えるものではないので、今から日本国内の食料自給率の向上が必要不可欠です。

その食料自給率の向上のために必要なのは、
第一に、政府による生産者のための枠組み作り、
第二に、生産者と製造者が消費者のために生産すること、
そして、第三に、消費者がニーズにより生産をささえること、
このつの歯車がうまくかみ合ってこそ、はじめて歯車が動き出し、危機の打開の第一歩である、食糧自給率向上に繋がるのです。

では、今この歯車はどのような状況でしょうか?
政府は食糧危機に対し食料自給率を上げるための農業支援策、輸入安定化策をとっています。また、農業生産者や食品製造業者は消費者のニーズにこたえるために、様々な取り組みをしています。
しかし、聴衆の皆さん、生活を少し振り返ってみてください。
私たちは自給率の向上のために何か行動を起こしているでしょうか?
わたしたちは今、食べられているから大丈夫、これから先も大丈夫と考え、将来、日本が直面する食糧危機を遠い存在とはとらえていませんか?

私が演台にたつ理由は、そんな消費者の危機感を高め、食料問題解決への歯車を動き出させることにあります。

(2)まず、そもそも危機感なんか図れるの?と言われそうですが、食料問題に対する危機感のバロメーターは私たちの身近な食生活の中にあります。
それはゴミです。なぜなら、ゴミとは購入から消費を通した危機感の程度が集約されたバロメーターであるからです。極端なたとえですが、戦後のような食糧難の時代であれば、食べ物を大切にするため、ごみはあまり出ません。
反対に、現在のような食べ物に不自由しない時代において、ごみが大量に出されていることから、ごみは危機感のバロメーターであることが理解できると思います。

したがって、本弁論においては、いかに消費者の危機感が低いかを明らかにするためにゴミを分析してゆきます。
現在、食生活は自宅で調理、食事するだけではなく、外食、コンビニのお弁当など多様化しています。それに伴い、ごみの排出主体も家庭や様々な食品製造業者と多様化しています。
家庭と食品製造業者が排出しているゴミは、国内を出回っている食品量の約3分の1に当たる、2164万トンです。
この2164万トンのうち、半分の1135万トンは食品製造業者から排出され、家庭も同じく半分の、1039万トンを排出しています。
そして、食品製造業者に対しては、平成13年度より食品廃棄物の発生の抑制、再利用、減量の取り組みを求めた食品リサイクル法が施行され、食品廃棄物の再利用率の向上などの成果を上げています。
一方、消費者の排出する生ごみは、毎年1000万トンあたりで推移し、食べ残しと手つかずの食品は、国内を出回っている食品量のACT約6%にも上ります。食べ残しと手つかずの食品の値段を総計すると、1家庭あたり1年間で約11万円近く出費していることになり、国全体にすると約2兆円にもなり、これは日本国内の農業と水産業の総生産額の約16%相当します。
以上の分析により、食べられるはずの多くの食品をごみとして捨てているという事実から、消費者の危機感が低いという大きな問題点が明らかになりました。

(3)それでは、なぜ消費者の危機感が低いのでしょうか?
原因は以下の1点に集約されます。
私たちの生活に食糧危機がまだ「遠い存在」であるということにあります。
世界では食糧危機が起こっており、食糧の偏在により飢餓が起きています。
しかし、日本では、現状食べ物を満足に食べられているので、食糧危機と言われたところで、実感はわきにくいのです。
そのため、食べられるはずの多くの食品をごみとして捨ててしまっているのです。

(4)以上の問題点を鑑みて、消費者に購入の見直しと消費の見直しを促し、ひいては危機感を高めるために3点の政策を示したいと思います。
(1)点目、セーブ・フード・マーク運動
(2)点目、ごみ有料化全国導入
(3)点目、振興券の交付

1点目の政策のセーブ・フード・マーク運動とは、消費者が農業を支える運動であります。セーブ・フード・マーク財団を設立し、協賛企業を募ります。そして、その企業の商品に、セーブ・フード・マークを添付します。その企業の商品を消費者が買い、一定のマークを集め、財団に送ると、財団が点数を集計します。
そして、協賛企業がその貯めた点数に応じ、消費者に国産品を買える金券を消費者に渡します。協賛企業は、消費者の購入額の10%を農家のための環境整備などの支援に充てます。
次に、セーブ・フード・マークの表示は、現在の食糧自給率の低さと食料危機を広告するものとします。これを表示することにより、消費者に購入段階において危機を考えさせることができ、購入の見直しをさせる効果があります。

2点目の政策であるごみの有料化は、ごみの回収袋を有料化するというものです。現在、全国の57%の自治体で導入されており、ごみの排出量削減の成果を上げています。
ごみの有料化は食育や農業体験などに比べ、消費者に身近で、注意の向く頻度が多くなるので、食生活により注意を払うようになります。
加えて、ごみという危機感のバロメーターを使うことで、より客観的に消費を見直すことができます。

3点の目の政策であるごみの削減目標を達成するための振興券の作成とは、自治体ごとにごみ削減目標を毎年の排出量から策定し、削減目標を達成できた分の住民税を世帯単位で、住民に振興券として還元するものとします。この振興券は国産の食品を買うことのできる券とします。
削減目標を達成させるために、年ごとの削減目標を設定するだけではなく、月ごとの残余排出量も住民に知らせ、目標の達成の実現性を高めます。

(5)以上、3点の政策によりどのように消費者の危機感が高まるかを示したいと思います。
まず、1点目の政策により、購入の時に消費者に危機を強く喚起します。
そして、2点目と3点目の政策により、ゴミという危機感の程度のバロメーターを使い客観的に消費を見直すことができます。
この消費の見直しを通して、消費者が食生活に注意を払うようになります。
これにより、消費者が購入段階で危機を強く認識するようになり、消費者は危機を打開するために、セーブ・フード・マーク運動により活発的に参加するようになります。また、この消費者の行動は、企業にも波及し、企業の生産の見直しにもつながります。
次に、先ほどのべた消費者という歯車がどう噛み合い、危機の打開につながるかを説明したいと思います。
私の政策により生まれた危機感の高い消費者が、たとえば、国産品を買うなどのニーズを行使したとします。
それにより、国産品の需要が高まり、国産品の価格が高まります。
価格が高くなることで、農業の魅力が高まります。
農業の魅力が高まることで、担い手が増えます。
担い手の増加により、生産量が増え、食糧自給率が向上します。
このことからも、明らかなように、消費者という歯車は食糧自給率向上に欠かせない歯車なのであります!

今を生きるための、そして未来を切り開いていくための、原動力である“食”その食の危機は、政府、生産者だけが取り組めばよい課題ではなく、消費者も含めた3つの歯車がかみ合ってこそ、初めて打開への歯車が回りだし、解決されるのです。
だからこそ、今ここにいらっしゃる聴衆の皆さん、1人、1人が、確かな未来をつくるために、今から危機感を高め、行動をおこすことが、必要なのです。

ご静聴ありがとうございました。


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