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演題 「こんな参議院はいらない」

弁士 杉山慧志 (政2)

2007年7月の参議院選挙以降、国会の政治地図は大きく変わりました。衆議院の多数派と参議院の多数派が異なるねじれ国会となったのです。ねじれ国会によって総理大臣がわずかな内に2人も入れ替わり、国政は大きく混乱しています。
ねじれ国会が起こる以前は、参議院はこれほど注目を集めていませんでした。今、このように国会が混乱状態にあり、参議院に注目が集まっている中で、私は、今こそ参議院について考えるべきだと思います。

さて、いままでも参議院の不要論、改革論について多くの議論が交わされてきました。さらに最近、実際にねじれ国会になってわかってきた問題もあります。以下、私が考える参議院の問題点を2点、示したいと思います。
1点目。参議院のカーボンコピー化
2点目。ねじれ国会による国会の空転

1点目の参議院のカーボンコピー化について。国会で、衆議院の多数派と参議院の多数派が同じ場合、参議院は衆議院で可決した法案をほとんどすべて、そのまま成立させてしまいます。このような状況を揶揄して、参議院は衆議院のカーボンコピーだ、と言うことがあります。このようなとき、参議院の存在意義はどれほどあるのでしょうか?
たとえば2005年の衆議院選挙を思い出してください。参議院は当初、衆議院で可決された郵政民営化法案を否決しました。しかし、いわゆる郵政選挙の結果によって、参議院は一度否決したにもかかわらず、郵政民営化法案を成立させてしまったのです。この時、参議院は死んだのです

2点目のねじれ国会による国会の空転について。衆議院の多数派と参議院の多数が異なる場合、いわゆるねじれ国会の場合を考えてみます。このような場合、衆議院で可決された法案は参議院で否決され、参議院で可決した法案は衆議院で否決されてしまいます。このような場合、衆議院、参議院ともに法案に対する拒否権を持っていることになります。
2008年の通常国会では、政府提出法案のうち、17本が成立しませんでした。その中には障害者の雇用促進や児童福祉に関する法案といったものもあり、本来ならば話し合いによって決めるべき法案でさえも、成立させることができなかったのです。
さらに、政府が提出した法案のうち、法案の修正協議がおこなわれて成立した法案は、前年までと比べて増えておらず、むしろ少なくなっています。
最近の国会を見ても、たとえば11月18日の参議院外交防衛委員会では、民主党の委員長が、「ただいまから参議院外交防衛委員会を開会します。」と述べた直後、「それでは、休憩といたします。」と言っていきなり休憩にしてしまいました。
さらに、与党である自民党も、参議院で委員長ポストを占めている委員会で、50日間に渡って議員提出法案を1本も審議しないなど、野党がおこなうはずの審議拒否を繰り返しています。
つまり、これは与党、野党が政策を議論し、よりよいものを作ろうとしているのではなく、相手の法案を通さないために、審議時間を引き延ばしているだけなのです。ねじれ国会によって議論が活発になり、より良い法案が成立する、という考えはまさに机上の空論です。
さて、このような中で、与党は衆議院で3分の2以上の議席を占めているため、いわゆる3分の2条項を使うことができます。しかし、実際に使われたのはたった7回しかなく、しかもそのうちテロ特措法1つを除いて、すべて予算関連法案に対してです。予算を見た場合、予算案が可決されても、関連法案が可決されなければ、予算は成立しません。つまり、国債1つとっても、法案を成立させなければならず、もし与党が3分の2条項で可決してなければ、今年の予算は組めなかったのです。
今でも空転しているとされている国会ですが、もし、次の選挙で与党が3分の2に達しない状況でねじれ国会となった場合は、いったいどうなるでしょうか?議論を尽くし、より良い法案を作る、という国会の理想が達成されるとは、到底思えません。

以上2点の問題点を述べてきました。さて、これらの問題はなぜ起こるのでしょうか?私はその原因は、次の一点に集約されると思います。

それは、衆議院が2つある、という点です。つまり、衆議院と参議院両方に、法案の成立に対して同程度の権限を与えているということです。同じ権限を持っている議会が2つあり、あたかも衆議院が2つある、という状態なのです。
このような場合、ねじれ国会ならば、どちらの議会も法案の拒否権を持っているため、議会は機能せず、また、議会がねじれていなければ、法案をもう一度採決するだけ、時間の無駄になってしまいます。さらに、このような場合、参議院に期待されている衆議院をチェックする、という機能も、まったく機能しなくなってしまいます。
このような事態を回避するためにはどのようにすべきでしょうか。私は、衆議院と参議院が、それぞれ違った権限を持つことによって、このような問題は解決できると思います。つまり、それぞれが違った角度から権限を持ち、互いをけん制することで、今の状況を変えることができるのです。

以上のように問題点とその原因を考え、私は衆議院、参議院にそれぞれ別の権限を与えることで、議会がより良いものになると考えました。そのために、以下に2点の政策を示します。
1点目。衆議院の法案に対する権限を、今以上に強める。
2点目。参議院の決算と法律監視に対する権限を強める。

1点目について。現在の制度では、法案に対しては、3分の2条項を除いて、衆議院と参議院はほぼ同等の権限を持っていました。しかしながら、このように衆議院と参議院が共に拒否権を行使できるような制度によって、国会は空転しています。このような点から、法案が参議院で否決された場合は、衆議院で2分の1以上の再議決があれば、成立するものとします。

2点目について。いままで国会では、予算や法案成立に対しての議論は活発でしたが、決算や法案成立後についてはあまり議論されてきませんでした。現在、国会には決算監視委員会、行政監視委員会、というものがあり、そこで決算や法律運営などを監視していますが、そこで間違いが指摘されても、担当閣僚が謝るだけ、というものにしかなっていません。そのため、衆議院に対してのチェック機能としての意味合いからも、参議院に今まで以上に決算や法律を監視する権限を与えます。つまり、衆議院では予算と法案成立を、参議院では決算と法律の見直しを行うこととするのです。
具体的には、衆議院で予算を可決する際に、参議院で昨年度の予算についてきちんと議論し、決算を議決してからでなければ、衆議院で予算を可決できないこととします。また、過去の予算について議論するなかで、無駄や欠陥があった場合は、その担当職員や議員に対して、処分を下す権限を与えます。もちろん、決算をいつまでに議決するかは明確に定めます。
また、法律を監視する点から、法案が成立後に欠陥が認められた場合、その法律を見直す権限を与えます。具体的には、参議院の2分の1以上の議決で、衆議院に法律見直しを求める決議を行えることとし、さらに3分の2以上の議決で、参議院に法律を廃止させることを認めます。

以上のように参議院を改革することで、参議院のカーボンコピー化を防ぎ、ねじれ状態での、国会の空転を防ぎます。つまり、ねじれ国会とならない場合は、与党は、野党が過去に成立させた予算や法律を攻撃することができます。また、ねじれ国会となった場合は、野党は、決算や法律の見直しを求めることで、与党を攻撃できます。その際、互いに拒否権を持っていないため国会が空転することもなくなります。
このようにすることで、国会では議論が深まり、より良い参議院に生まれ変わるのです。

ご静聴ありがとうございました。


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