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演題 「裁判員制度」

弁士 田仲信康 (政2)

『「およそ7割、7割もの人が参加を拒否している」来年5月より本格的に裁判員制度が実行されます。司法とは国の三権の内の一つであり社会正義実現の為の重要な場です、また日本全国万人が関わる可能性があります。しかし今この重要な司法の場で裁判員制度という大きな欠陥を孕む制度が実施されようとしています。

まず裁判員制度とはなにか?
基本的には選出方法はくじ引きの後50~100人を対象とした面接をします。対象事件は地方裁判所で審理する重大な刑事事件の一審のみとなります、構成は裁判官3名裁判員6名 多数決で評決をおこないますが少なくとも裁判官 裁判員1人ずつの賛成が必要です。

次に裁判員制度の問題点とはなんでしょう? 
その問題点とは以下の2点に集約されます。
1,国民にとって大きな負担となる    
2,裁判の運用に関わる
以上の2点です。

1つ目の大きな負担とは、単純に考えてまず時間が拘束されます、現在一つの事件にかかる時間は、およそ1、2週間です。法律で裁判員として仕事を休んだことを理由に雇用主がその人を不当にあつかったら刑に処されますが、罰則で問題が解決するならそもそも司法は不要です。また実際に法廷に立ったとしても問題は生じます、裁判員は被告人の前で顔を晒す必要があるのでともすると裁判員が報復を受ける可能性があります、「大丈夫だアメリカでは一件もそういった事はなかった」と裁判所はのべていますが、日本には裁判員制度に対する下地がまだないために同様とはいえませんし過去に裁判官が襲われたということもありました。
2つめの裁判の運用に関わるとは多くの人が参加を拒んでいるので裁判員が集まらず、迅速な裁判が行えなくなることもあります、また裁判官の思惑によって結論を誘導されうることが、先日の模擬裁判員制度で露呈しました。
加えて費用もかかります、今後市民が参加しやすいように全国253の裁判所の修工事が必要となり、300億円ほどかかると試算されています、加えて社会人裁判員が仕事をしなかった分生じる社会的損失も発生しうるでしょう。

このように裁判員制度には大きな穴があります。以上のことから私が言いたいこと、それはただ1つ裁判員制度の撤廃です。』

と言いきるのはまだ不適当です。その前に裁判員制度のメリットも見ていただきたい。
ここで一度本弁論の構成を述べたい、まず先ほどまでに述べていたのがこの裁判員制度の問題点についてです、そしていまから裁判員制度の導入の経緯とメリットを述べます、その後に現行の裁判員制度の問題点を解決していきます。

それではそもそもなぜ裁判員制度が導入されたのでしょうか。
説明いたしますと、それは司法の充実化と市民との距離をうめることにあります。

司法の充実化とは裁判官が市民の意見をとりいれられることにあります。人々の生き方や考え方が多様化した現代ではまさにさまざまな意見、考え方がもとめられています。また日本という国は刑罰の幅が他国より広く、放火にしても執行猶予から無期懲役や死刑にも渡ります。このような柔軟な刑罰の性質から日本の裁判ではより柔軟な意見が求められるのが理解できます。現場の声としても私が取材した裁判官暦30年の高麗裁判官は「現状の市民と裁判官の乖離を見るにそういった多様な意見が必要だ」と述べていました。

つぎの市民との距離を埋めるとは「二割司法」市民は司法の2割しか活用できずに残りは泣き寝入りや司法以外の決着方法をとっている、と現在言われています。その原因の1つが市民にとって司法が遠いものとなっていることがあげられます。このことから司法をよりわかりやすく・利用しやすく・信頼たるものにすべきだという現在の司法の課題を解決するべく裁判員制度は導入されました。

次に裁判員制度のメリットでありますがそれは以下の二つです。

1つ目は裁判員制度の導入により裁判の迅速化が図られます。
現在の裁判制度では警察の取り調べの調書を使った裁判となっているために「調書のどこどこに書いてあった点についてはどうか」などとまさに重箱の隅をつつくような裁判をしていたのが裁判員制度をとることによって裁判の審理は口頭で行われることにより調書主義による自白の強要の改善や迅速化が図られ、また市民に理解しやすく平易なものとなります。これにより裁判の時間は半分ほどになると試算されています。

そして最後に一番重要なのは「市民が司法に参加する」ということです。
これは目に見えないメリットですが大きなメリットがあります。例えば市民が司法へ参加し被告人に自己を投影させることによって罪の重さを考えます。私は先日裁判員フォーラムに参加し、他の模擬裁判員と被告人の罪の重さについて議論したときにそのことを深く実感しました。今までわれわれはこのような司法へ直接参加することができなかったのが、この裁判員制度を導入することにより、その機会が与えられます。

しかし現行の状態では、裁判員制度は運用上のデメリットが大きすぎます。裁判員制度により参加日数が短縮されたといってもやはり仕事をしている人には厳しいものがあります、現に日数が数日でも仕事がいそがしいので裁判員を辞退したいと言う人は76.6%にも昇ります。そこで現行の制度にほんのわずかな工夫を加えて、デメリットがメリットを上回らないようにします。

本弁論の目的は裁判員制度を市民のみなさんがより参加しやすいように立て直し、市民の司法への理解や司法の充実を促進させることにあります。

ではそのわずかな工夫は2つあります、1つはインターネットとカメラを使った裁判の映像化です、もう1つは裁判員の事件別の振り分けと立候補制の取り入れです。

1つ目の裁判の映像化とは、そのままの意味で法廷内にカメラとインターネット整備を設け裁判の審理を映像化します、そして裁判員には裁判所が渡した情報端末にて人の目にふれぬように審理の様子を見てその内容を咀嚼します、この映像をみだりに公開したときには罰則が与えられます。またこの情報端末をとおして裁判官や被告人・証人に質問ができるようにします。
審理を全て見終わった後には近くの市役所などで裁判官に誘導されぬよう裁判員のみで話し合い結論をだし、それを裁判所に提出します。法解釈などについては先ほどの情報端末で裁判官に質問可能にします。

もう1つの裁判員の事件別の振り分けと立候補制の取入れとは、現在裁判員による裁判の対象となる事件は三千三百八件。内、被告人が罪を認めている自白事件は全体の70%程に昇ります。この自白事件には裁判員としての参加が難しい、忙しい人を振り分けます、自白の事件においては審理の日数は少なく有罪か無罪かがほぼ決定しているので裁判員は刑罰の重さの判断のみをします。否認事件については裁判員制度に参加したいという意欲的な人をとりいれます。私はこれに加えてさらに裁判員の立候補制をとりいれます。現在裁判員として参加したくてもくじ引きゆえに参加したいという意思とその機会がミスマッチしています、これでは市民の司法への参加の機会を増やしたとはいえません。先日私が東京地方裁判所に傍聴したときは事件にもよりますが少なくとも3から10人ほどが参加していましたので、裁判員の数がさらに確保しやすくなります、こういった意欲的な人に加え、裁判員制度においては過去5年以内に裁判員として参加したものは参加の辞退が認められるので仕事がある人は自分の都合のよい時に参加すれば今後忙しいときに裁判員として呼び出されても辞退をすることができます、こうすることによって本来裁判員に意欲的でない人も裁判に参加しやすくなります。もちろんこの立候補した裁判員も面接があるので不公平な裁判をしうる人は除外されます。

このあたらしい裁判員制度で今後司法の場はこうなります。
運用面では今まで仕事が忙しくいやいや行くしかなかった裁判員は裁判所に行く時間や手間が省け会社で仕事があっても情報端末にて顔を晒すことなく安全にわかりやすく、迅速化された裁判に参加ができます。また交通費や改修費用も節約できます。法廷では自白の強要がへり、刑罰の決定においてはカメラに収めた市民の議論をみて裁判官は柔軟な意見を取り入れ、市民は司法への理解や信頼を得ます。そしてわれわれ市民は裁判が終わった後に裁判を通じ罪の重さを見つめ法の意識を高め、司法を身近に感じ二割司法という現状を脱しより司法を活用するでしょう、裁判員としての体験は家族や知人に伝播していき、司法と市民の融和が波紋上にひろがっていくでしょう。

こんな司法を私は実現していきたい、以上のことから私がいいたいこと、それはただひとつ、このあたらしい裁判員制度を導入すべきである。

ご清聴ありがとうございました。


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